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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「本当に最後なので、もう1回だけ…」“ギャンブル依存症”水原容疑者の懇願、そのとき大谷翔平は…何故もう一歩踏み込まなかったのか?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/15 17:02
銀行詐欺の疑いで訴追された水原一平容疑者(右)。米司法省の起訴状には「被害者はMLBのスター大谷翔平」と記されていた
一般人からすると「せめて1年に一度くらいアクセスした方がいいのでは」と思わなくもないが、大谷選手の性格上、「特に使っていないので確認する必要がない」という姿勢だったのだろう。
なぜもう一歩踏み込まなかったのか?
責められるべきは長年にわたって巧妙に嘘をつき、窃盗していた水原氏であり、あえて責任を問うのであれば、バレロ代理人や会計士、財務アドバイザーだろう。
もちろん彼らも水原氏に嘘をつかれていたわけだが、税金申告などの際に口座の確認は必要だったはずで、なぜもう一歩踏み込まなかったのか、と全員が悔やんでいるはずだ。
大谷選手が水原氏に頼りすぎた、通訳以上の業務で酷使していたのではという意見も見られた。しかし起訴状にも書かれている通り、水原氏は球団との雇用契約に加え、大谷選手個人とも雇用契約を結んでいる。
シーズン中は体力的にもきつく、多忙でストレスが溜まったり、満たされないものがあったのかもしれない。しかし業務に不満があったなら改善を要求したり、辞職という方法はあったはずだ。
そうしなかったのは自らへの利益を計算していたからに他ならない。さらに言うと、言葉の壁と立場を悪用し、大谷選手を騙し続けていた。
水原氏が解雇された後、ドジャースのロバーツ監督が「翔平とのコミュニケーションに障壁がなくなった(風通しが良くなった)」と話しているが、水原氏がこれまで必要以上に大谷選手をガードしていたのは、大谷選手のためではなく、むしろ英語をブラッシュアップさせないように、自分に依存させるように仕向けていたようにも感じられる。
今回の件を機に、代理人や会計士などのサポートスタッフは、今後、大谷選手と踏み込んだ関係性を築いたり、時に応じて通訳を2人用意するなどの対応が必要かもしれないが、大谷選手が極端に何かを変える必要はないように思う。
英語やコミュニケーションの必要性を感じれば、周囲の力を借りて細かな言い回しなどを覚えていくはずだ。だが、英語の勉強や財務管理に必要以上に時間を割く必要はないと思う。
大谷の興味や関心があるのは野球で、それを突き詰めているからこそ、メジャーリーグという世界最高峰の舞台で2刀流ができているのだから。
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