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「負担増えている」発言、大谷翔平は3回繰り返した…ピッチクロックへの意見を米国メディアも注目「がっかりした」ケガ人続き、スター選手も不満 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2024/04/10 17:26

「負担増えている」発言、大谷翔平は3回繰り返した…ピッチクロックへの意見を米国メディアも注目「がっかりした」ケガ人続き、スター選手も不満<Number Web> photograph by KYODO

現地4月8日のツインズ戦前、報道陣の取材に応じた大谷翔平(29歳)。「(ピッチクロックで)間違いなく負担増えている」と発言

 メジャーリーグ機構も、球界を代表するスターの発言については軽々しく扱うことはできない。大谷の他にも、ゲリット・コールはESPNの取材に対して「がっかりした」と前置きしたうえで、

「野球という産業、プロダクトにおいて、選手というものは最も重要な資産だ。そして選手のケアについては、メジャーリーグ側にとっても、そしてわれわれ選手にとっても本当に大切なことなんじゃないのか」

 とピッチクロックへの不満をあらわにした。

 大谷、コールといった球界を代表する選手の発言は変化を促す可能性はある。

 それでも、ピッチクロックの短縮と故障の因果関係の証明はなかなか難しいから、今季中のルール変更は難しいと思われ、メディアではこの問題がシーズンを通して議論されていくと思われる。

 もし、これからも投手たちの故障があいつぐようだとすると――。試合時間の短縮で喜んでいたメジャーリーグ側も、さすがにルールの再検討をせざるを得なくなるかもしれない(ただし、統計的に3月、4月に故障が多いのもまた事実である)。

プロ野球への影響はあるのか?

 さて、この問題で気になるのは日本への影響である。

 日本の試合はアメリカより長い。2023年、NPBの平均試合時間は3時間7分だった(9回試合のみ)。過去10年を見てみると、2013年、2014年は3時間17分だったから、10分ほど短縮されていることにはなる。ただし、テンポの良いメジャーリーグの試合を午前中に見てしまうと、日本の試合は冗長に感じてしまう。

 NPBも試合時間短縮には積極的に取り組んでおり、今季からは選手の登場曲の長さを「10秒以内に徹底」することを決めた。もともと「試合時間短縮に向けての施策」の中で、

「選手が打席へ向かう際に流す場合、テーマソングの演奏時間は、試合時間短縮を考慮して(中略)可能であれば10秒以内に抑えること」

 と明文化していた。しかし、運用面で徹底されることはなかったため、昨年11月のオーナー会議で、10秒以内というルールを「厳守」することが確認され、今季から実施されている。

 私からすると、「そこじゃないだろ」とツッコミを入れたいところだが(実際に球場で聞くと、物足りなさを覚える)、試合時間の短縮を本気で考えるなら、個人的にはピッチクロックの導入は不可欠だと考えていた。しかし、アメリカから今回のような問題が提起されると、簡単に導入のための論陣を張ることは難しくなる。

 ましてや、海の向こうで大谷が声を上げたとなると――回りまわって日本球界にも影響を及ぼすことになる。

 ピッチクロックと故障という新たな問題。大谷翔平の発言の意味は決して小さくはない。

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