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「1イニングでも長く、球数も多く」ロッテ・佐々木朗希はさらに進化する…怪物右腕5年目の手応えと心に誓う「“あの日”を背負う使命」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2024/03/31 11:04
佐々木朗希のプロ5年目のシーズンが始まる
感覚を掴んだ佐々木は8月以降、6試合に投げて37イニングで2勝0敗。被安打21、44奪三振で四球はわずか5つ。防御率は1.22という成績を残すことになる。中でも10月は3試合19イニングで自責点1という驚異的な結果を出すことになった。そして翌22年4月、完全試合の偉業へと繋がっていく。きっかけとなったのは名古屋のマウンド。今シーズンもまた、ここから同じ上昇カーブを描く予感がする。
佐々木は開幕を前にした会見で「球速はまだ上がると思う。状態も、もっと上がると思いながら調整をしていく」と力強く話し、「ここまでフォームがしっくりこなかったことはあったけど、それを色々と手探りの中でやって考えて状態を上げていくことができた。このことはシーズン中に生きてくるかなと思う」と語った。
「3.11」を背負う使命
狙い通り、自らの手で答えを掴んだ若き右腕の姿には吉井監督も満足顔だ。「本当をいうと前回の登板の途中ぐらいから何か見つけたような感覚になっているかなと思っていた。それを今回は出してくれた」と目尻を下げた。
ルーキーイヤーから大きなものを背負い続けてきた。今季3度目のマウンドは、東日本大震災発生から13 年目となる3月11日の前日だった。「ボクにできることは野球を頑張ること。そこに集中して頑張りたいと思います」とメディアを通じ、メッセージを送った。
毎年この時期が来ると、佐々木はあの未曾有の大震災についてコメントを求められる。1年目の2020年は「たくさんのものを失ってあらためて気づいたことがたくさんあります。後悔しないように生きていきたいと思いました。今、あることは当たり前じゃないと思った。今という時間を昔より大切にするようになったかなと思います。今、生きている身として亡くなった人たちの分も一生懸命に生きていかないといけないと思いました」、と。プロ2年目は「毎年、忘れる事はない。毎年、ボクにとって特別な日です」と発信した。
大切なものを失ったあの日
故郷の岩手県に戻った2022年のオフ、佐々木があの日のことを話してくれたことがあった。
「校庭まで津波が押し寄せてきました。みんなで必死に高台まで逃げたのを覚えています。正直、なにが起きたのか分からなかったけど、その事は今でもはっきりと覚えている」