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りくりゅうは欠場中も「希望を失わなかった」落ち込んでいた木原龍一を支えた、三浦璃来の“ある一言”「あらためて良いチームだと思いました」 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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posted2024/03/29 17:12

りくりゅうは欠場中も「希望を失わなかった」落ち込んでいた木原龍一を支えた、三浦璃来の“ある一言”「あらためて良いチームだと思いました」<Number Web> photograph by Getty Images

ケガ、欠場を乗り越え、世界選手権で銀メダルを獲得した三浦璃来・木原龍一

フリーを以前のプログラムに戻した理由

 モントリオールでは、フリーを2シーズン前の「Woman」に戻してきた。そのことを決めたのは、この四大陸選手権中のことだったという。

「SPも、フリーも、手直しが必要でした。でも世界選手権までに両方とも完成させる時間はとてもありませんでした。我々の選択はSPかフリーのうちどちらかを、以前に滑り込んでいたプログラムに戻すこと。僕は『Woman』を彼らに強く勧めて、二人がそれに同意するという形で決めたんです」

 2020年から2シーズン使用した「Woman」は、10位だった2021年世界選手権から、翌年2位へと飛躍し日本のペアとして史上はじめて世界の表彰台に到達した二人を支えたプログラムである。

「彼らにとても合っている作品ですし、良いイメージのあるプログラムに戻したことは正解だったと思っています」

緊張気味の三浦の横で、ニコニコしていた木原

 モントリオールのフリーでは、三浦はやや緊張した表情で、木原はニコニコと笑顔で登場した。「演技前は笑っていたので、多分余裕があったと思うんですよ」と木原は翌日、フリーを振り返ってちょっと他人事のようにそう言った。

「お客さんみんなに僕たちのことをもっと好きになってもらいたい、僕たちのことを知らなかった人もこれから応援していこうって思ってもらえるような演技をしたいと思って滑りましたし、カナダのお客さんは素晴らしい。良い演技をすれば必ず応えてくださる。良い演技をしなくても全員に素晴らしい拍手してくれる方々なので、それに全力で応えようと思って滑りました」

フリー演技を終えた後、ぜんそくの発作が…

 馴染み深いメロディが始まると、二人はまるで着なれた服に袖を通すようにごく自然な動きで高い3ツイストから演技を開始した。後半のサイドバイサイドサルコウで三浦が2回転になった以外、ノーミスで滑り切った。フリーは144.35で1位。だがSPでの点差を補うことはできずに、地元カナダのステラトデュデク&デシャンが初優勝を果たした。

 思わぬハプニングが起きたのは、その後のことである。

 ペアの表彰式が始まるまでに長い時間がかかったが、三浦&木原が体調不良で式に出られないことが、発表された。木原の腰の負傷がぶり返したのか、と頭によぎったがそうではなかった。

 表彰式を待っている間に木原の咳が止まらなくなり、血中酸素濃度が落ちて酸素吸入を受けることになったのだという。その後も立ち上がろうとしてもふらつきがあったため、表彰式と記者会見を欠席することになった。

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