2023年M-1・連続インタビューBACK NUMBER
「なんでヘンダーソンは決勝いけへんかったんや」疑問の声も…M-1ラストイヤーコンビが味わった“恐怖の数秒間”「敗者が酒を飲み続けた夜」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2024/03/24 11:08
昨年が結成15年、M-1ラストイヤーだったヘンダーソン。子安裕樹(写真左)と中村フー
中村 ダメだったら、もう、ほんまに終わりなんでね。
――結果的に最初の1票はヘンダーソンでしたが、残りの4票はすべてシシガシラでした。
中村 すぐには拍手はできなかったですね。ちょっと時間を置いて、ポンポンぐらいはしましたけど。そうしたら横で相方が、なんて言ったんだっけ?
子安 「(シシガシラ)がんばれーっ!」って。大声で叫んでましたね。
中村 腹立つわ。
――「ちくしょー!」という意味でもあるわけですよね。
子安 マジで泣いてしまいそうやったんで、大声でかき消しただけなんですけど。でも、あのときあいつら、1回も振り返らんかったな。なんやねん思うたわ(笑)。
――やはりこういう取材を受けるたびにあのときの気持ちが思い出されるものですか。
子安 よみがえりますね。
中村 よみがえって、やっぱ悔しいな、って。あんな悔しい思い、今まで味わったことないんでね。全部終わって後輩とかに「おつかれした」って言われたら、もう無理でした。また、バーッと泣いてしまって。その日に(大阪へ)帰るの嫌やったんで、夜、武智さんと飲みにいったんですけど、そんときにフースーヤの(田中)ショータイムから電話があったんです。彼らも敗者復活でシシガシラに負けてたので、「悔しいっすね……」って号泣してて。それ聞いて、また涙が出てきて。夜中3時くらいまで新宿らへんで飲み続けて。なんか、ずっと悔しい日でしたね。
――子安さんは敗者復活戦のあと、どうしたのですか。
子安 僕は後輩2人と一緒に帰りました。僕が3人分のグリーン代を払って。M-1で優勝したら、グリーンになるっていう話を聞いていて、行きは普通車、帰りはグリーンっていうのが夢やったんです。なんで、とりあえず自腹でやっとこうかなぐらいの感じで。
――完璧な漫才でしたもんね。一分の隙もない。
中村 全部、詰め込んだんで。海鮮丼と言ってくださる方もいました。
――中村さん、こみ上げて……。
中村 今、ちょっと、グッと。声、震え出しちゃいましたね。もう、しゃべらんとこ。
<続く>
(写真=山元茂樹)