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「田中碧は“自信を持て”とだけ。守田英正にはあえて…」「例えばお風呂で2人の時に」中村憲剛が“未来の日本代表”への助言を見極めたワケ
text by
中村憲剛Kengo Nakamura
photograph byJFA/AFLO
posted2024/03/24 11:02
23年9月、ドイツに4-1で大勝した際の田中碧と守田英正。中村憲剛が知るフロンターレ時代の2人と、彼らに助言を送ったタイミングとは
田中が試合に出場するようになってからは細かく指示をしたり、プレーについてアドバイスを送ったりもしたが、当初の彼にかけていたのは、「自信を持ってプレーしろ」という言葉だけだった。
一方、大卒で川崎フロンターレに加入した守田は、すでに身体もできあがっていた。加入した2018年のキャンプ時点で、彼がレギュラーへと抜擢される予兆はすでにあった。フィジカルを生かして相手からボールを奪取する能力に優れ、そのボールの奪い方にも狡猾さを持ち合わせていた。守田は身体がすでにできあがっている一方で、彼自身も話してくれたが、当時は足元の技術が足りていなかった。
それでも予兆していたとおり、守田はプロ1年目の2018年、リーグ開幕前に行われるFUJI XEROX SUPER CUPで試合途中から右サイドバックとしてプロデビューを飾った。その後もコンスタントに試合で起用されると、数カ月後の9月には日本代表に呼ばれるほど注目を集めていた。
あえて黙ることを選んだワケ
ただし、その守田は翌2019年途中から、ケガや起用法の問題も重なり、前年よりも出場試合数が減ってしまった。以前はフィジカルの強さを生かして、守備でチームに貢献していたが、プロになって技術が伸び、余裕を持ってプレーできるようになった。それによって、やりたいプレーやできるプレーが増えたのだが、それによって、逆に壁にぶつかっているように感じた。
苦しんでいる理由を言葉で伝えるのは簡単だ。しかし、僕はあえて黙ることを選んだ。それは、成長を実感していた今の彼にアドバイスを送っても、彼のためにはならないし、彼にとってもすんなりと聞き入れられる状況にないと判断したからだった。
プロ1年目で苦しむ田中に「自信を持て」と声をかけ、プレーについて明確なアドバイスを送らなかったのも同様だ。練習で彼がうまくいっていないことは、一緒にプレーしていたり、近くで見ていたりすればわかる。そのときの田中にとっては、プレーのアドバイスをして、身体だけでなく、頭のなかまで混乱させることはマイナスに作用すると考えた。
調子がいいとき、苦しんでいるときに指摘をしても…
彼らに限らず、どんな選手に対しても、僕は適切な言葉を、適切なタイミングで伝えるように常に心がけていた。