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藤井聡太21歳「課題が残った」20連覇は研究者のように…「勝つことに慣れるのが怖い」大山康晴19連覇と好対照な勝負観〈元A級棋士の視点〉 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2024/02/23 06:00

藤井聡太21歳「課題が残った」20連覇は研究者のように…「勝つことに慣れるのが怖い」大山康晴19連覇と好対照な勝負観〈元A級棋士の視点〉<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将戦3連覇を果たし、笑顔を見せる藤井聡太八冠。この防衛劇でタイトル戦20連覇となった

 2020年の棋聖戦五番勝負で初挑戦した藤井七段は、渡辺明棋聖を3勝1敗で破り、初タイトルの棋聖を獲得した。第2局の中盤で指した受けの△3一銀は、AI(人工知能)の読みも及ばない意表をつく好手として話題になった。

 藤井はその後、20年に王位(木村一基/以下、カッコ内は対戦棋士)、21年に叡王と竜王(いずれも豊島将之)、22年に王将(渡辺)、23年に棋王と名人(いずれも渡辺)とタイトルを獲得し、保持したタイトルを防衛し続けた

 そして、23年10月に藤井竜王・名人は王座戦五番勝負で永瀬拓矢王座を3勝1敗で破り、前人未到の「八冠制覇」を達成した。

 藤井が20連覇したタイトル戦の通算成績は71勝16敗(0.816)。実力のある保持者や勢いのある挑戦者に対して、この勝率は驚くばかりだ。21年王位戦第5局から22年叡王戦第3局までは13連勝した。第1局で負けた(計4回)以外は負け越しがなく、シリーズで2敗が最多である。

「運」にも恵まれたが「勝負」にこだわらなかった結果

 21年の叡王戦(豊島叡王−藤井王位)は2勝2敗となり、唯一の最終局に持ち込まれた。第5局の最終盤で藤井が指した▲9七桂が問題の一手で、AIの評価値を大きく下げた。形勢逆転かと思われたが、事なきを得る運があって藤井が勝った。

 23年王座戦第4局の最終盤で、藤井は負け筋と観念して△5五銀と指したが、永瀬が即詰み手順を見落とすという運によって逆転勝ち。開き直りが八冠を呼び込んだ。

 こうした大勝負では、目に見えない勝ち運をつかめるかどうかも重要といえる。

 藤井の驚異的な強さについては、改めて述べるまでもない。ただ「将棋の強さ」と「勝負の強さ」は必ずしも同じではない。逆転負けしたときには「将棋に勝って勝負に負けた」という。

 藤井がタイトル戦で20連覇した背景には、前記の例のように「運」に恵まれたことがあるが、「勝負」にこだわらなかった結果ともいえる。もともと「栄誉や記録にはこだわらない」と自身で言っていた。ただ、タイトル戦の緒戦で負けた次の第2局、タイトル獲得に王手をかけた対局で、平静な気持ちを保てるのだろうか……。

「えっ?」と思う藤井将棋と“研究者的”なイメージ

 藤井はタイトル戦の対局を、シリーズという「線」ではなく、1局ごとの「点」で見ていると思う。だからどんな勝負の成り行きになっても、精神的なブレが少ない。栄誉や記録の前に「実力をもっとつける」という究極の目標を大前提に、対局で最善を尽くした結果、勝利による点の集積が20連覇といえる。

 また藤井の将棋には、同じ棋士から見て「えっ?」という手をよく見かける。

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