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藤井聡太21歳「課題が残った」20連覇は研究者のように…「勝つことに慣れるのが怖い」大山康晴19連覇と好対照な勝負観〈元A級棋士の視点〉

posted2024/02/23 06:00

 
藤井聡太21歳「課題が残った」20連覇は研究者のように…「勝つことに慣れるのが怖い」大山康晴19連覇と好対照な勝負観〈元A級棋士の視点〉<Number Web> photograph by JIJI PRESS

王将戦3連覇を果たし、笑顔を見せる藤井聡太八冠。この防衛劇でタイトル戦20連覇となった

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 藤井聡太八冠(21=竜王・名人・王位・王座・叡王・棋王・王将・棋聖)は2月8日、第73期ALSOK杯王将戦七番勝負の第4局で、挑戦者の菅井竜也八段(31)を4連勝で下して防衛した。

 これは「タイトル戦20連覇」の新記録となり、大山康晴十五世名人が1960年代に打ち立てた19連覇を更新した。王将戦での藤井と菅井の勝負、藤井の20連覇の軌跡、大山の19連覇と不滅の大記録、大山と藤井の勝負観などについて、順位戦A級在籍経験がある田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】

王将戦、開幕前は接戦になるのではと予想したが

 藤井王将に菅井八段が挑戦した今期の王将戦では、私こと田丸九段は大接戦になると予想した。

 昨年の叡王戦五番勝負で菅井は藤井に1勝3敗で敗退したが、逆の目があったほど内容が良かった。王将戦リーグやA級順位戦で好成績を挙げた。武器としている振り飛車に凄みが増した――。以上が、菅井が王将戦で健闘するという論拠であった。

 1月上旬に行われた王将戦第1局の前夜祭で、菅井は「自分を応援してくれる振り飛車党のファンの人たちのためにも、自分自身のためにも、今は評価が低い振り飛車を信じて、十分に通用するんだということを結果で示したい」と、タイトル奪取に向けて抱負を語った。

 菅井は王将戦第1局で、昨年の叡王戦に引き続いて「三間飛車穴熊」の戦法を用いた。2日目の小競り合いが続いた中盤の局面で、残り時間は藤井の30分に菅井は約2時間。菅井が曲線的な指し方で長期戦に持ち込めば、藤井を残り時間で苦しめて有利に展開するはずだった。しかし、と金を作りにいく藤井の△8七歩を軽視し、菅井は直線的な指し方で動かざるを得なかった。以降は藤井のペースとなり、菅井は一方的に敗れた。

 王将戦は藤井の4連勝という圧倒的な戦績に終わったが、第1局の明暗が勝負の分かれ目になったと思う。また、菅井は第2局の中盤で85分の長考の後に、わずか4分で予定外の手を思わず指してしまい、1日目の封じ手の前に敗勢に陥った。

 藤井は王将戦を防衛し、「タイトル戦20連覇」の新記録を樹立した。記者会見では「記録は意識していませんでしたが、光栄なことだと思っています。これまでのタイトル戦では苦しいシリーズもあり、幸運もあったと感じています。大山先生の棋譜は奨励会時代に並べたことがあります。手厚い指し方はとても勉強になりました」と語った。

20連覇を振り返ると、勝率なんと「.816」

 あらためて、藤井のタイトル戦20連覇の軌跡を振り返ってみる。

【次ページ】 20連覇を振り返ると、勝率なんと「.816」

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