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笑顔のワケは“賞金6億円”だけじゃない?…松山英樹「苦悩の763日」マスターズ優勝よりブランクが長く感じた理由〈30代初優勝〉 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byZUMA Press/AFLO

posted2024/02/21 11:02

笑顔のワケは“賞金6億円”だけじゃない?…松山英樹「苦悩の763日」マスターズ優勝よりブランクが長く感じた理由〈30代初優勝〉<Number Web> photograph by ZUMA Press/AFLO

「ジェネシス招待」で2022年1月以来となる米ツアー通算9勝目を挙げた松山英樹。2月25日に32歳になる

 2022年の春先、ソニーオープンの約2カ月後に首の故障が顕在化。自宅のリビングから立ち上がれないほどの痛みを発症しながら、強行出場と欠場、途中棄権を繰り返した。“騙しだまし”でやる過ごせるほど、肉体的な余裕はなく、そしてPGAツアーは甘くはない。首から背中にかけての痛みが軽減された昨年、「スイングが分からず、パットも一番、泥沼にハマっている感じだった」と振り返る試合がまさに、このジェネシス招待の前回大会だった。

 その後も復調のきっかけをなかなかつかめないまま、飛距離ダウンに悩み、持ち前のショットのキレが影を潜めた。前シーズンよりもドライバーショットは平均で7.5ヤード落ちた。

 もっと問題だったのはミドルアイアンでピンを狙うシーン。想定よりも10ヤード近く飛ばないこともザラで、「それではゴルフにならない」。年間ポイントレースであるフェデックスカップランキングはツアー10年目にして自己ワーストの50位。本格参戦初年度から続けてきたトップ30による最終戦、ツアー選手権出場もかなわなかった。

帰国中はほとんどクラブを握らなかった

 失意の1年を終え、夏場から翌シーズンが始まるまでのあいだ、松山は日本国内で調整に勤しんだが、多くの時間はオーバーホールに費やした。フィジカルだけでなく、メンタルも。

 8月に帰国してから1カ月はほとんどクラブを握らなかった。ボールを打ったのも、黒宮幹仁コーチと数日、室内練習場で短いセッションをしたくらい。

「ほんとに一日、二日だけで。50球くらい軽く打った後に、シミュレーションゴルフで110ヤードくらいの距離から“ホールイワン”にチャレンジしたんですよ。意外と入るんちゃうかと思ったら、これがなかなかうまくいかない。ムキになって80球くらい打ったら、次の日もう腕はパンパン、背中はバッキバキ(笑)。一般のゴルファーだって、(練習では)もっと打ったりするでしょう? 『練習って、ゴルフってしんどいんだなあ』って」

 ツアーを戦いながら、ここ何年も抱えてきた「もう若い頃と同じだけの打ち込みや、トレーニングはできない」という悩みは、そんな完全オフの日常でも感じられた。

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