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笑顔のワケは“賞金6億円”だけじゃない?…松山英樹「苦悩の763日」マスターズ優勝よりブランクが長く感じた理由〈30代初優勝〉
posted2024/02/21 11:02
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
ZUMA Press/AFLO
タイトルから見放された時間。日数にして、763日。
2022年1月、ハワイでのソニーオープンから2年あまりの時を経て、松山英樹が再びウィナーズサークルに帰ってきた。
寝ぼけまなこで見たスマホ、あるいはおもむろに電源を入れたテレビ。日本の多くのファンにとってはきっと、思わずのけぞるような爽快な目覚ましになったに違いない。
“ブランク”が長く感じた理由とは?
ジェネシス招待最終日、松山がロサンゼルスに刻んだのは「62」の大会コースレコード。首位と6打差の7位スタートから9バーディ、そのうち6つを5打ビハインドで迎えたバックナインに集める猛チャージで逆転優勝を飾った。
自らの一打を「完璧」と振り返るのも珍しい。12番で15mのバーディパットを沈めてトップに立って迎えた15番、6Iでの得意のカットボールはピンそば30cmについた。終盤のスーパーショットから三度3連続バーディを奪い、鮮やかに賞金400万ドル=円安もうれしい約6億円をかっさらった。
繰り返すが、2年ぶりの勝利である。しかしどうにも“前回のブランク”よりも長かったような気がしてならない。
2021年4月、松山は3年7カ月、実に1344日ぶりのツアー優勝をマスターズで飾った。今回、当時以上に苦しみぬいて、勝てない時間にピリオドを打ったように感じてしまうのは、抱えてきた闇がより濃かったからかもしれない。
2017年の夏場からオーガスタでの歓喜までの時間は、松山は抱えていた問題点を明け透けにせず、黙々とスイングや用具の改善に取り組んでいたのに対し、この2年は苦悩する様子が誰の目からも見て取れた。