濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“闘うバービー人形”はブロンドの髪、ピンクのコスチューム…新人女子レスラー・Chi Chiがリングで見せるギャップ「気の強さは誰にも負けない」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/02/19 17:00
Evolutionの1期生として2023年3月にデビューした女子プロレスラーのChi Chi
プロレス入門前は通訳をしていた過去も
バービーに背中を押されてプロレスラーになったのは彼女くらいかもしれない。Evolutionに入門する前は、ある団体競技の世界で外国人選手の通訳やエージェントをしていた。ワーキングホリデーで英語を学んでいる時に縁ができたという。
「チーム付の通訳もエージェントも会社員ではないので不安定ではあるんですよ。どっちにしろ実力本位でチャレンジする人生だから、プロレスラーを目指す気になったのかもしれないです。選手ではないけどトップアスリートの世界を見てきたので、プロレスの練習生になってからも“痛いのは当たり前、厳しいのは当たり前”という感覚でしたね」
他競技と比べてプロレス界はどう見えるか。そう聞くと「ちょっと古い感じがします」とChi Chi。
「たとえば、プロレス団体にはフィジカル担当の専任コーチがいないのかなって。マッサージやリハビリ担当のメディカルスタッフも。団体によるんですかね。こんなに体を酷使するジャンルはないのに不思議ですよね」
“闘うバービー人形”が向き合うもの
まだキャリアは浅いが、自分が気づいたことは発言しようと思っているという。
「プロレス界がそんなに縦社会だとは思わないですけど、私は“横社会”が好きなので(笑)。キャリアが浅いと発言権すらないの? という疑問もあります」
チームスポーツではルーキーがチームの中心として活躍することもあるし、Chi Chiが関わったチームではミーティングでも積極的な発言が求められていた。チームのためになる意見にキャリアは関係ないというわけだ。他競技の世界を知るChi Chiが試合以外でも目立ち、影響力を持つことはプロレス界にとって重要なことだろう。
“闘うバービー人形”がプロレスデビューした2023年には、奇しくも映画『バービー』が大ヒットした。バービーという架空の存在を通して、男性社会の問題点や人間らしさとは何かを考えさせる傑作だ。あくまでカラフルにチャーミングに古さが残る世界と向き合う。そういう意味では、プロレス界におけるChi Chiの存在自体がバービーのようだと言えるのかもしれない。