Number ExBACK NUMBER
「レース3日前にコーチと大ゲンカ」でも日本記録に肉薄だったのに…《東京マラソン参戦決定》新谷仁美が明かす「ベルリンで失速」のナゼ
posted2024/02/10 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
JIJI PRESS
昨年は、目標達成まで「あと数秒」に迫ったレースや、そこからの失敗レースも経験した。この1月には自身がペースメーカーを務めた大阪国際女子マラソンで、前田穂南(天満屋)の日本記録樹立の瞬間も目撃した。紆余曲折を経てたどり着いた東京の地で、彼女は何を目指すのか。そこに至るまでの葛藤についても聞いた。《NumberWebインタビュー全3回の初回/#2、#3に続く》
2023年1月のヒューストン・マラソン。
日本記録(当時)にはわずかに12秒届かなかったが、日本歴代2位のタイムでゴール。誰もが記録更新はほぼ射程圏内だと思っていた。
だが、満を持して向かった9月、高速コースで知られるドイツのベルリン・マラソンでは中盤以降に失速した。
レース3週間前の「違和感」
新谷に限らず、練習拠点とするTWOLAPSや指導を行う横田真人コーチは、SNSを通じて練習の模様を随時ファンに公開している。ベルリン・マラソン直前の高地合宿の様子を捉えた動画では新谷の仕上がりは順調に見えた。
「途中までは確かに順調でした。ただ、レースの3週間前に、継続的に練習を外すことがあって。予定よりも強度を下げた練習にしたり、横田さんがコントロールをしてくれていたのですが……。自覚症状はないけれど、疲れが出てきているのかなとか、ちょっとやばいなとか思い始めていたんです」
たった1週間の違和感。だが、それは新谷にとって大きなものだった。
「私は継続的に練習をつなげることができてはじめて、結果につながると思っています。予定していた練習ができなかったということは、階段が途中でなくなってしまったようなもので。決して諦めていたわけではないけれど、自分のメンタルはガクッと落ちていました」
そしてその違和感はレース当日、新谷を苦しめた。
「アップのときから、リズムが合わなくて。調子が良いときは呼吸が苦しくても、体はしっかり動けていると感じられるのですが、逆に調子が悪いときは走りに余裕がなかったり、リズムが取れない。あの日は、なんか違うなと思ったままスタートラインに立ちました」