オリンピックへの道BACK NUMBER
張本美和と伊藤美誠の「明暗」はなぜ分かれた? 女子卓球“最後の1枠”争いはこうして決着した…明らかになった「選考レースの問題点」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/07 11:01
パリ五輪の出場予定選手に選ばれた張本美和と平野美宇
「世代交代の意味でも張本を」という意見は…
「張本選手はシングルスもダブルスも活躍できます。昨年1年間、国際大会に帯同して、戦いぶりや上位選手との戦績を見ながら、張本選手が一番ふさわしいと思いました」(渡辺監督)
張本は昨年9月のアジア大会女子団体決勝で世界ランキング当時4位の王曼昱から第1ゲームを奪い、木原美悠とともに臨んだダブルスでは準々決勝で世界ランキング1位の孫穎莎、王曼昱のペアから金星をあげた。
また、12月のWTTファイナルズでは、孫穎莎に2―3と好勝負を演じた。これら中国勢との試合なども踏まえ、「団体戦でシングルスもダブルスも活躍できる選手」であることから、張本が選出されるに至った。
選考に注目が集まる中、「世代交代の意味でも張本を」という意見も時折耳にした。早田、平野、伊藤は同世代であり、のちのちを考えれば若い世代を1人入れたほうが、という観点だ。いたずらに世代交代を前面に押し出すことには与しないが、そいう観点を除いても、張本の成長ぶりは選ばれるに十分値する。
伊藤美誠はなぜ“3大会連続の五輪”を逃したか?
対する伊藤は、立ち位置の違いも大きかったのではないか。
東京五輪では団体戦代表だった平野美宇には、大会を終えて、次はシングルスで切符をつかむというモチベーションがあり、東京五輪で補欠だった早田は当然、次こそオリンピックへ、という気持ちがあった。張本も含め、すぐさま次へと視線を変えられる、追う立場にあった。
伊藤の場合、東京五輪ではエースとして期待される中、金、銀、銅と3つの色のメダルを獲得し、大きな成果をあげて大会を終えた。どの競技の選手でも、簡単に次へとは目を向けられない状況があり、伊藤の立ち位置は、最初から追う立場にいた選手たちと異なる。
加えて、東京五輪から大きな間隔のない中でスタートし、しかも国内での選考会やTリーグも選考ポイントの対象となることで過密となったスケジュールがあった。