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「ブサイク」「おばさん」というヤジも…高知の人気女性ジョッキーが経験した“容姿への誹謗中傷”「女性騎手はアイドル化している」
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/02/12 06:00
多くの観客の目にさらされるジョッキー。なかでも相対的に数の少ない女性ジョッキーに対しては騎乗以外の部分が脚光を浴びるケースもある
宮川 今でもそうですけど、女性騎手がアイドル化している風潮を感じます。ファンから騎乗技術について言われるのではなく、「おばさん」「ブサイク」とか言われることもありました。
――男性の騎手が「なぜ勝てなかった」と騎乗について批判されることはあっても、容姿の美醜が批判の的になることはないのに。
宮川 騎手時代はそれが結構キツかったです。騎乗については何を言われても受け止められましたけど、それ以外のことを言われると落ち込んでしまいました。
テレビ、SNS…PRと誹謗中傷
――容姿批判の声が聞こえる中、高知競馬のPR活動を行うことには葛藤もあったんじゃないですか?
宮川 ありましたね。PR活動をしたくないわけではないし、ラジオや新聞、雑誌はいいけれど、「テレビはちょっと勘弁してください」と言っていた時もありました。
――外見を磨いたら磨いたで、「そんな時間があるならトレーニングしろ」という声も出てくるでしょうし、難しいですね。
宮川 以前は競馬場まで来ないと見られなかったのが、今はいろんな媒体やSNSで見ることができるので、誹謗中傷が多いのも気になります。私が勝ったあるレースでは、2着が人気騎手だったこともあって、そのレース後には誹謗中傷もだし、SNSの通話機能を使って電話までかかってきて、あれは一番ビックリしました。
イチからどれくらいできるかを試してみたかった
――高知競馬の看板として活躍していた頃、韓国に長期遠征に行こうとすると、引き留められたこともあったそうですね。
宮川 「今はちょっと遠慮してほしい」と言われました。「あぁ、行けないのか……」と正直なところ思いましたけど、高知競馬があっての自分なので、高知が苦しい時に私が行くのはな、と思って一度は断念しました。だけど、甘い環境に自分がいると感じ始めている時で、別の場所でイチからどれくらいできるかを試してみたかったんです。父の厩舎にはいい馬が揃っていたので、努力して勝っても「環境がいいからね」と言われることがすごく多くて、自分でも「やっぱりそうなんかな」と思うようになって、色んなことが複雑に絡み合っていました。