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「何を言ってるんだ。日本は強いだろ」アジアカップ現地カメラマンが海外メディアに聞いた“日本代表へのホンネ”…それでも苦戦が続くのはなぜか?
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2024/01/25 17:50
1-2で敗れた1月19日のイラク戦、相手選手に包囲される久保建英。「優勝の本命」と見なされる日本代表だが、一筋縄ではいかない戦いが続いている
他のグループでもそうだ。パレスチナ代表はパレスチナという存在そのものを伝えるために複雑な感情をエネルギーに変えて戦い、決勝トーナメントに進出した。シリアもタイもヨルダンも……ほとんどのチームが毎試合を決勝戦かのように戦う。シャッターを押しながら、背負っているものの性質の違いをストレートに感じる。
そんな彼らの戦いぶりは観る者を否応なく惹きつける。カタールでの開催ということで「アラブの連帯」という側面も大いにあるが、ベトナムに対してもそれは起こった。スタジアムに集まった観客たちは彼らの勇敢なプレーぶりに味方し、ただボールを持つだけでビッグチャンスになったかのような雰囲気を作り出す。
カメラマンが見た冨安健洋の“強烈なリーダーシップ”
本気で下剋上を狙う相手に、過去最高の評価を得ている日本は前評判通りの結果を出さなければならない。それを成し遂げることは、アジアのレベルを更に上げることにも繋がる。それが過去最高の評価を得たことに伴う責務だろう。
堂安律は「(勝つための試合運びをする大切さを)W杯で学んだはずなのにアジアでできないのは、アジアをナメているだけだと思う」と口にした。
最強のはずの日本代表は、最高の結果を出して各国の目標レベルをさらに高めることができるだろうか。
ポジティブな要素はある。イラク戦で試合終了間際に1点を返したキャプテンの遠藤航だけでなく、同試合の後半から出場した冨安健洋が強いリーダーシップを発揮していることだ。
インドネシア戦の前日会見で「僕らから仕掛けて叩きのめす気持ちでやりたい」と語った背番号22は、攻守どちらの場面でもプレーが切れるたびに大きなアクションを交え、DFラインを保つだけでなくチーム全体を調整。有効な縦パスを何本も供給し、自分たちが戦いやすい形をとり続け、抜群の安定感をもたらした。
アジアの戦いは決して簡単ではない。相手が背負っているものが、日本のそれと大きく異なっている場合も珍しくない。だからこそ、アジアカップは精神論抜きに観ることができないほど過酷だ。
伝説となった2004年のヨルダンとのPK戦も、2011年の李忠成の劇的な決勝ゴールも、アジアの頂点に立った時は必ず限界を超えてからの決着があった。
冨安のリーダーとしての振る舞いは、限界を超えたチームがベストパフォーマンスを発揮する大きな助けになるはずだ。