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井上尚弥は「求められているものが高すぎる」長谷川穂積が同情する“4階級王者の大変さ”「判定だったらグダグダ言われて」「でも倒すからすごい」
posted2023/12/29 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Takuya Sugiyama
井上尚弥(大橋)がマーロン・タパレス(フィリピン)との2団体王者対決を制し、バンタム級に続いてスーパーバンタム級でも4団体統一を成し遂げた。この試合を実況席で見守った元3階級制覇王者の長谷川穂積さんはこの歴史的一戦をどう見たのか。長谷川さんが試合のポイント、井上のすごさ、そして将来までを語った。
今回、特に注目したのは「太もも」
12月26日に東京・有明アリーナで行われた4団体統一戦は、井上がほとんどのラウンドを抑えて、最後は10回KOと倒しきった。長谷川さんは「井上選手が圧倒して、中盤までに倒すと思っていた」というからその予想は少し外れたことになるが、試合前に井上の圧勝をあらためて確信するシーンがあったという。
「今回、特に注目したのは井上選手の太ももなんですよ。公開練習で見てビックリしました。あんなすごい太ももを見たのは初めてだったので。あれだけの筋肉の太ももを作ろうと思ったら、走り込みをはじめ相当厳しいトレーニングが必要です。ボクシングは足からなので。あの太ももが、あれだけのスピード、踏み込みを生んでるんだなと思いましたね」
バンタム級から戦い方を変えた
下半身こそが井上の爆発的なボクシングの原動力だ。長谷川さんはモンスターの太ももに強さの秘訣を見た。
「井上選手はバンタム級に上げたくらいから戦い方を変えましたよね。重心をより低く置くようになった。これだと強いパンチが打てますし、バランスも崩れにくい。ただあれをやるには相当な足のスタミナがないとできないんですよ。しんどいんです。ようはスクワットの途中の姿勢で、ずっと12ラウンド動き続けるようなものですから」
驚いたタパレスの戦略
試合が始まってファーストラウンド、長谷川さんはタパレスの出方に少し驚いた。