濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「他では見られない安納サオリだった」人気女子レスラー“3試合出ずっぱり”の凱旋興行に密着「体重が4kg減って…そりゃそうですよね」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/12/29 11:07
昨年に続く滋賀凱旋興行で1日4試合をこなした安納サオリ
関口翔、櫻井裕子との3way(3人同時対戦)マッチは10分時間切れドロー。地元の社会人プロレス団体「長浜プロレス」提供試合に続いて、またも安納がリングへ。ゆるキャラ「びわ湖くん」をセコンドにつけての救世忍者乱丸戦。コミカルな乱丸ワールドに飛び込んで観客を沸かせる。こちらは7秒で一瞬の勝利……からの再試合というおなじみの展開も安納が制した。
そしてメインイベントはタッグマッチ。SAKIと組んで本間多恵&網倉理奈と対戦した。1日3試合、厳密に言うと4試合。それもMIRAIとタイトルマッチで30分闘った翌日である。
「だってMIRAIと30分やることになるなんて思ってなかったですもん(笑)。実は、予定していた選手が何人かケガで出られなかったんです。でも私個人の感覚として、他の選手に“代打”をお願いするのはしのびなかった。出てもらうのにポスターにも載せられないですし。それなら自分が全試合出ようかと。私の凱旋興行なので、出ずっぱりで楽しんでもらえたらという発想です。ちょっとしつこいかなとも思ったんですけど(笑)」
「他では見られない安納サオリだったと思います」
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コスチュームも青の旧バージョンから白、最新の青と全試合変えるサービスぶり。凱旋興行は選手にとって大事な晴れ舞台だから、ファンもフラワースタンドなどを贈り全力で盛り上げる。入場時に投げ入れる紙テープも有志が大量に準備。売っているままではなく芯を抜いて巻き直すのだ。それを会場で他の観客に配る。滋賀大会でも、そんな光景が見られた。
しかし、だ。この日の安納は当日発表で3試合。紙テープを作ってきたファンはそれを知らない。それでも、3試合目のメインイベントにも紙テープが飛んでいた。去年と同じく、対戦相手の本間が「え、引退するの?」と突っ込むくらい大量の紙テープだ。安納が説明してくれた。
「後から聞いたんですけど、ファンの人たちは第1試合に私が出てきた瞬間に“これは1試合だけってことはないだろう”と察してくれたみたいです。それで紙テープも残しておいてくれて」
そんなファインプレーも、ファンの愛のなせる業。大会はタイトル通りハッピーであたたかい空間になった。どの試合も、とにかく安納が楽しそうだ。スターダムではクールに振る舞うことが多く、OZアカデミーではヒールユニットで黒のコスチュームに身を包んでいるのだが。
「全力で闘うのはいつもと一緒。でも他では見られない安納サオリだったと思います」
リラックスして親密感のある大会に
滋賀出身の安納サオリが滋賀で試合をする。普通に見えて、実は不思議な感覚だったという。暇さえあれば実家に帰っているという安納にとって、滋賀は休む場所であり“素”に戻る場所。そこで試合をしているのだ。
「やっぱり滋賀にいるとダラけるんですよ、私は。オフになるんです。いつもはオフになる土地で、試合をしてオンの状態になる。それが不思議なんですよね。しかも家族も見にきてるから照れくさくもあるし」