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「やっぱり忘れられへんのよね」人気女子レスラー・安納サオリはなぜ“スターダムの白いベルト”にこだわるのか?「今も悔しさや後悔が…」
posted2023/12/27 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
ポーカーフェイスを決め込んでいるように見える。“冷たさ”さえ感じるときもある。女子プロレスラー、“絶対不屈彼女”こと安納サオリは、今年の4月から戦いの場を主にスターダムのリングに移した。
「そう思われるんですが、全然そんなことないですよ。試合前まで冗談言ったり、ふざけたりしてますし。家じゃ、エビせんかじってます」
安納はあえてキャラクターを作っているわけではない、と話した。そして激動の1年を自ら振り返った。
ライバルの背中を見つめて「私は何やってんやろ」
4月23日、横浜アリーナ。安納にとって6年ぶりのスターダムのリングだった。KAIRIに指名され、安納はなつぽい、KAIRIとトリオを組んだ。そして獲得したアーティスト王座(6人タッグ王座)は、「REstart」というチーム名とうまくダブった。プロミネンスの世羅りさ組と戦い、安納が鈴季すずを押さえ込んだ。
「私にとって、初めてのスターダムのベルトを巻くことができました。あれが本当の始まりなんですよね。私たちにとってのスタートが切れた」
アーティスト王座は5月27日に大田区総合体育館でジュリア組に敗れて短期で手放すことになってしまったが、これは安納が輝ける場所に駆け上がっていくための大きな一歩だった。
「スターダムのリングに上がっていることを当たり前と思ってない。さらに輝くためにここに来たって気持ちは変わってない。数年間、ずっと見てたよ、なつみ(なつぽい)のこと。どんどん輝くなつみを見て、『私は何やってんやろ』と思ったし、周りからも『元パートナーは大舞台で輝いてるのに何してん』って言われた。でも、私は私で輝く道を少しずつやけど進んできた。それは胸を張って言える。本音言うと、スターダムのリングで一番意識していたのは、なつみと会うこと。なつみとは向き合わなくちゃいけない運命だから」
かねて仲良しでもあり、また複雑な縁で結ばれていたなつぽいとは、7月2日にインディアン・ストラップマッチ(革ひもデスマッチ)まで発展し、印象的な試合をすることができた。革ひもの試合は見た目以上に難しい。それでも2人は革ひもに繋がれ、見るものの心を動かす消耗戦をやってのけた。