濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
薬物逮捕から回復中の母が観戦に…BreakingDownの“不良ではない”実力派・外枦保尋斗「負けたらやめる覚悟でした」 プロ対抗戦で生まれたドラマ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byBreakingDown
posted2023/12/11 17:01
BreakingDownにて杉本祥に勝利を収めた“実力派”外枦保尋斗(右)
不良ではない“実力者”たち
プロ選手と闘うことで、ブレイキングダウン出場で人気を博した者たちの実力が測定、査定される。そういうシビアな闘いは、結果としてブレイキングダウン勢の勝利となった。5試合して3勝2敗、3勝すべてがKOである。
「なんだかんだ言って、ブレイキングダウンの選手は強いと思いました」
大会後、未来は対抗戦をそんな言葉で振り返った。その一方で「今回はプロ側もトップ選手が出たわけではないので」というコメントも。
対抗戦で勝ったブレイキングダウンファイターのうち、YURAと外枦保尋人(そとへぼひろと)はキックボクシングのプロ経験がある。戦績もよく、いわゆるホープ。だから“不良がプロに勝った”というわけではない。だがそれはブレイキングダウン=不良というイメージが正確ではないことの証明でもある。
ブレイキングダウンがなかったら、彼らはプロの世界で活躍し続けただろう。K-1甲子園出身のYURAは12月にプロイベントRISEでも勝利を収めた。だが、彼らが世に出るために選んだのはブレイキングダウンだ。その影響力は認めざるを得ない。“不良”や“チンピラ”と呼ばれる者だけがブレイキングダウンに出ているわけでもない。プロの選手に勝つような“実力派”もいることは広く知られていいのではないか。
かつて薬物で逮捕された母が初めて観戦に
外枦保がブレイキングダウン出場の道を選んだのは、母のためだった。薬物に溺れ逮捕され、どこかで服役しているという母のためにオーディションに応募した。
母の薬物使用を警察に通報したのは彼自身だった。自分が頑張っていることを伝えたい。母が立ち直るきっかけになりたい。そのために必要だったのが、人気コンテンツであるブレイキングダウンで名を上げることだったのだ。それを「手っ取り早く有名になろうとしている」と批判できるだろうか。
「負けたらやめる覚悟でした」
プロ選手を鮮やかなアッパーカットで倒した外枦保は言った。引退覚悟の理由も語ってくれた。
「僕はブレイキングダウンにかけてるので。勝てたのはブレイキングダウンで人生変えようとしている人間と、踏み台としか考えてない人間の差です」
もう一つ、絶対に負けたくない理由があった。現在、母は出所しており外枦保と再会を果たしている。今回はその母に大会チケットをプレゼントした。初めて、生で自分の試合を見てもらえたのだ。KOを決めると、外枦保はケージに上ってアピール。視線の先には母がいた。
「最高の景色でした」と外枦保。
もちろん、単に「ブレイキングダウンの選手はプロより強い」ということではない。朝倉未来は、この「プロ対抗戦」を今後も続けたいと言う。