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「鈍臭いのはずっと変わらない」元アイドルの女子プロレスラー・神姫楽ミサが取材中に流した“涙の意味”「勝ちに貪欲でいたい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/11/09 17:01
JTO所属の女子プロレスラー神姫楽ミサ
インタビュー中にこぼれた“涙の意味”
今年8月、JTOの同期である柳川澄樺と組んでアイスリボンのタッグ王座を獲得。10月にはPURE-Jで若手王座POPのベルトを巻いた。タッグ王座は2度目の防衛戦で手放したが、次のチャンスもある。JTOで新設された「GIRLS王座」だ。初代王者決定リーグ戦、神姫楽は恩人の山縣に勝利して決勝進出。ベルトをかけてタッグパートナーの柳川と対戦する。舞台は11月10日の後楽園ホール大会だ。両者にとってデビュー3周年の記念試合という面もある。
「澄樺とはタッグを組んでますけど、だからこそ一番負けたくない相手でもあります。たぶん向こうもそう思ってるでしょうね」
プロレスラーになって3年で2つのベルトを巻いた。後楽園で勝てば3本目。「何をやっても鈍臭いのはずっと変わらないです」と言う神姫楽は、チャンピオンベルトを「応援してくれる人たち、一緒に練習してくれた人たち、アドバイスをくれた人たち、みんなで獲ったもの」だと考えている。これまで関わってくれた人のことを思うだけで、インタビュー中も涙がこぼれた。
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「私は凄く恵まれてるなって。いつか大きい会場で試合がしたいとも思うんですけど、その時もいま一緒にいる人たちとみんなで行きたいです。ファンの人たちと一緒に走っていけるレスラーでありたい」
同じアイドルグループだった中野たむへの思い
いつか対戦したい選手もいる。アイドル時代に同じグループだった中野たむだ。
「お互い今とは違う名前でアイドルをやってました。私のほうが先に入って、先にやめて。グループ自体がうまくいってなかったし、アイドル専業のメンバーと学生をやりながらのメンバーとでは活動に温度差もありました。私は学生で、アイドルも事務所から言われた仕事としてやっていた感覚でした。アイドルよりフォークソングが好きなくらい。たむはアイドル専業。やっぱり熱量が違いましたね。私がやめた後も大変で、グループをよくするためにいつもスタッフとぶつかってたみたいです」
たむがプロレスラーになった時には、神姫楽もプロレスファンになっていた。「やられた!」と思ったそうだ。たむはアイドル時代と同じかそれ以上の熱をプロレスに注ぎ、スターダムのトップに立つ。
「スターダムの日本武道館大会(2021年3月)は客席で見てました。メインはたむとジュリア選手の敗者髪切りマッチ。あまりにも凄い試合で大泣きしましたね。たむには言ってないですけど。アイドル時代は2人で遊びに行くくらい仲がよかったんですけど、グループをやめたことに後ろめたさがあって連絡を取らなくなってました」
アイドル時代もグラビア時代も“黒歴史”ではない。どちらもいい思い出だという。たむとの関係だけが心残りだった。
だが昨年、スターダムの若手主体興行New Bloodに出場する機会を得た。かすかなものではあるが中野たむとの接点が生まれたのだ。
「たむの対角に立てる選手になる。それもデビュー当時からの目標の一つです」