濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「最後は父に土下座しました」177cmの元家庭科教師レスラーと“家族の約束”「3年で芽が出なければ…」レディ・Cの知的でダイナミックな可能性
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2023/10/24 11:03
家庭科の教員を辞め、プロレスラーになったレディ・C。10月のタッグリーグではコスチュームを新調した
レディがデビューした2020年から、スターダムは新日本プロレスと同じブシロード傘下で急激に業績を伸ばした。人気が高まり、ビッグマッチが増え、大物フリー選手のレギュラー参戦や他団体からの移籍も多くなった。たとえば今年は安納サオリがトップ戦線に加わり、昨年から参戦している鈴季すずがシングルリーグ戦優勝を果たした。レディが成長しても、それと同じかそれ以上のペースで選手層が厚くなり、“上”が詰まっていく。不運といえば不運だ。
だが、レディ自身はどんな状況であれ明確な結果がほしかった。
「タイトルマッチをやらせてもらったり、ビッグマッチにも出場しました。特に自分の中で大きかったのは、新日本プロレスでのスターダム提供試合と、小橋建太さんのプロデュース興行に出場できたこと。“スターダム代表”として外のリングに上がれたので。でも、結果は負けでした。やっぱり形として結果が必要なんです。
会場で見てくれるファンの人たちは“成長してるね”、“技が増えたね”と言ってくれる。でもSNSには“レディ、負けてばかりじゃないか”という声もあって。それは団体公式アカウントの試合結果を見ての反応なんです。公式記録の○か●か、それしか見ていない人もいますから」
父親を、納得させたかった
もちろん、大事にしたいのは細かい部分まで見てくれる会場のファンだ。しかし“外野”が広いのも人気団体ゆえ。結果だけであれこれ言う人間がいるのは仕方ないし、その“外野”に父もいる。
教師になるくらいだから……ということなのかどうかは分からないが、生真面目で理詰めな性格だ。プロレスラーとして大成するなら、まずは身近な“外野”である父親を納得させたかった。地方巡業が多く家にいる時間が少ないから、一人暮らしをやめて実家に帰った。
「だから家にいると毎日のように、父から“いつやめるんだ”と言われてしまうんです。試合でアザを作って帰ったりすると余計ですよね(苦笑)」
そう語ってくれたのは5月のこと。レスラー人生の最初の栄冠として、それに父を説得するためにもほしかったのがフューチャー王座だ。練習生の頃から意識していた。タイトルマッチでの新人同士らしい、奇をてらわないまっすぐなぶつかり合いが好きだった。
「フューチャーはすぐ上の先輩で、同じユニット(Queen's Quest=QQ)の上谷沙弥さんが獲れなかったベルトなんです。他にたくさんのベルトを巻くことになる上谷さんがフューチャーのベルトは巻けなかった。それもあって“私が絶対に”と」