指揮官として初めてシティに土をつけたミケル・アルテタ監督は、75分に彼を投入した当初、シティの高速ウイング、ジェレミ・ドクをマークするように伝えたというが、そのベルギー代表が逆サイドにポジションを変えたため、以降の「トミは相手キーパーを追い回す左ウイングのようだった」と試合後の記者会見で語っている。

マンC戦では殊勲の働きを見せた　©David Price／Getty Images

　本当のトップレベルを普段から経験し、これまでに一度も勝てなかった“フットボール史上最強”とも言われる真のトップチームを打ち破った。冨安はそんな環境で多くのことを吸収し、24歳とは思えないほど成熟しているように見える。

　そして責任感の強そうなこの九州男児は、これまでの日本人選手が誰も肌身で感じられなかった経験を、日本サッカー界に還元しようとしているように思える。そんなことを質問しても、きっとはぐらかされそうだが。

「頭も体もリフレッシュして、プレミアやCLに」

「疲れましたね」と報道陣からの最後の質問──コンディションに関するものだ──に冨安は応じた。「しっかりリカバリーして、頭も体も切り替えてリフレッシュして。また帰ってから、プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、（国内）カップ戦と連戦が続くので」

　去り際に精悍な顔つきで「おつかれっす」と言い残し、日本代表の守備の要は、トップ中のトップレベルの日常に戻っていった。