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天を見上げた永瀬拓矢の目は、充血していた…記者が見た“テレビに映らなかった”八冠誕生の瞬間「10-0から逆転がある…将棋は残酷だ」 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2023/10/18 06:01

天を見上げた永瀬拓矢の目は、充血していた…記者が見た“テレビに映らなかった”八冠誕生の瞬間「10-0から逆転がある…将棋は残酷だ」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

直後の感想戦で対局を振り返る永瀬拓矢。棋界きっての努力家で知られる王座は藤井聡太を何度も追い詰めるも防衛は果たせなかった

「終局時間も遅かったですので、部屋に戻った後に軽く対局を振り返って……という感じでした。いろいろ考えてしまったところもあったのですが、それなりに普段通りには寝られたのかなと思います」

むしろ負けた時にどう気分を良くするか

 あれだけの大偉業の後でも“軽く”としながらも、感想戦後も対局を振り返っている。そんな真摯な姿勢と、気持ちをクールダウンして睡眠を取れる切り替えには驚くばかりである。なおその直後に「師匠や家族からのメッセージは?」と聞かれて「家族からは、はい。師匠はおそらくお忙しいかと思うので、まだご連絡はないのですが、こちらから報告を入れようと思います」とのこと。師弟ともに気遣いあってるんだな……とホンワカとした気持ちにもなる。

 最も印象に残っているのは「自身にご褒美をあげますか?」との質問に対する答え。

「私自身は勝った時に何かご褒美を、とは実はあまり考えていません。勝った時も負けた時も変わらずモチベーションを保つことが大事なので、むしろ負けた時にどう気分を良くするかは意識しています」

中村太地が唸った「私自身も大いに参考」

 後日、中村太地八段に話を聞く機会があったのだが、この言葉について中村八段も「強く印象を受けましたね」と語るほど、感銘を受けていた。

〈普通の人の思考だと勝利したり、テストでいい点や成績を残した時にご褒美をあげるものですよね? だけど負けた時にこそどうモチベーションと向き合うか。それは将棋ファンにとどまらない多くの人々に刺激を与える発想だと感じました。もちろん、私自身も大いに参考になりましたね〉

 藤井八冠は“ご褒美質問”の返答の最後に「この王座戦をしっかり振り返って、また前に進んでいけたらと思っています」とも語っている。

 八冠全制覇はゴールというわけでない。まだ見たことのない盤面の景色を追求する――数々の最年少記録やタイトル独占以上に、“面白い将棋を楽しむ”こと。それこそ藤井聡太という稀代の大棋士、そしてファン双方にとって最上の喜びなのだろうなと実感した1週間だった。

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「あああああーーっ!!」「そんなあ!!」藤井聡太“八冠達成の大逆転劇”に響いた悲鳴…記者が見た“テレビに映らなかった”全冠制覇の舞台裏

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