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「まさか涙を流してもらえているとは」宮原知子、1日限りの“現役復帰”でチームジャパン優勝! 坂本花織も「まばたきを忘れるくらい…」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2023/10/15 17:01
ジャパンオープン、1日限りの“現役復帰”で見事な演技を披露した宮原知子
そんな宮原に、1日限りの“現役復帰”が決まった。10月7日のジャパンオープンだ。プロ・アマ混合のエキシビションマッチで、チームジャパンは坂本花織、友野一希、島田高志郎の現役3人に、宮原が加わる。
「フリープログラムをもう1度やるということで、練習を出来る限りやってきました。現役の頃を思い出して頑張って。なんとか出来るジャンプ構成をひねり出して。(練習で)思っていたよりも4分間を滑りきれるなっていう気持ちは感じてはいました」
前日の公開練習では、若手選手に負けないスピード感で、颯爽とリンクを滑り抜ける。3回転ルッツを軽々と跳び、技の切れ味も鋭い。“まるで現役時代のよう”と言いたくなるが、現役時代とは明らかに違っていたのが、1つの作品を仕上げるパッケージ力だ。
「プロとしての見せ方の違いなど、表現の幅を広げる練習をしてきた部分を、出せたら良いなと思います」
そう語る宮原。ジャンプ1つ跳ぶにしても、その直前まで、全身と表情をフルに使って演技をする。コレオシークエンスが始まったのかと思って見入っていると、ジャンプを跳び、「あ、これはコレオシークエンスではなくて、ジャンプ前のつなぎの演技だったのか」と気付かされるほどだ。
「ジャンプを入れた時に、おろそかになってしまいがちな振り付けのところを、現役の頃を思い出して頑張って、総合的な練習をしてきました」(宮原)
テーマは「愛と情熱と宿命」
そのリンクサイドで、情熱的にアドバイスを送り続けていたのはステファン・ランビエル。現役時代にスイス合宿に参加したこともあり、また、プロになってからはコラボレーションナンバーで共演するなど、関係性を深めてきた。
「プログラムはステファンさんが振り付けてくださった『ロミオとジュリエット』。テーマは『愛と情熱と宿命』です」
宮原の持つ静謐なスケーティングに、ステファンの情熱性が加わり、新たな芸術が予感される。
「プログラム全体を通して、物語に沿った振り付けになっています。特にステップと最後のコレオはすべてをなげうって表現しようと思うので、そこを見て欲しいです」
“すべてをなげうって”という言葉に、表現者としての決意がこめられていた。
“表現者としての覚醒”を観客に…
迎えた10月7日の本番。宮原の演技を、ランビエルと島田、友野が見守った。