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「始まってすぐ、たぶん軟骨が折れて」具智元が涙に暮れた日…救いとなった一言「任せろ、俺たちがベンチにいる」<2019年負傷退場からの復活劇>
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/30 11:01
今大会、イングランド戦では負傷退場もサモア戦で復活出場を果たした具智元。じつは2019年W杯でも負傷退場からの復活劇を見せていた
両親はソウル郊外に暮らす。「家族のカカオトークで報告したら、すぐお父さんとお母さんから、それぞれ電話がかかってきました」。宮崎市内の病院のロビーで母と話した。「正直、自分が不安なのに、お母さんが話せないくらい泣いていたので、なぐさめる側に。お父さんはタメ息をついて、まあ、仕方がないという感じでした」。
父は韓国代表のプロップ
父の東春(ドンチュン)氏は韓国代表のそれは強靭なプロップであった。ジャパンを押しまくり、アジアの王者に輝き、ホンダヒートの前身、本田技研鈴鹿にも在籍した。だからラグビーにケガはつきものと知っている。それでも2学年上の智允(ジユン=ホンダヒート所属。CTB)とともに幼い智元を海外(ニュージーランドと日本)に出し、見守った歳月は「ハーッ」という一筋の吐息に凝縮された。
――W杯開幕まで2カ月強、焦るなというのも酷ですね。
「チームの高森(草平)ドクターが『全然いける(間に合う)』と伝えてくれて、メンタル的に安心はしたんですけど、痛くて箸も持てないし、ボールペンで字も書けないし、本当だろうかと、また不安になりました。でも3週目にテーピングしてパスをしたら、痛くなくなっていて」
――無事、復帰。開幕前、熊谷での南アフリカ戦で手応えを得たはずです。
「ボールを出さなければ、そのまま押し切れるスクラムもありました。相手のほうの頭が抜けて。すごく自信になりました」
――開幕のロシア戦は後半14分にベンチから。押しの強さで定評のバレリー・モロゾフと組み合いました。