「16年12月の世界戦前に担当トレーナーが肉離れを起こし、急にミットを持てなくなったんです。それで、悩んだ末に『申し訳ないですが、持ってもらえますか』と梅津さんに頼むことになりました。まだ、このときはトレーナーまでお願いするつもりはなかったのですが……」

　そして、迎えたWBO女子世界アトム級タイトルマッチで右ヒザ前十字じん帯断裂の重傷を負い、6回TKO負け。試合用のトランクスをはいたまま病院に運ばれた。担当トレーナーは別に抱えている選手の海外遠征が控えていたこともあり、代わりに付き添ったのは梅津と宮尾の母親。病院に着き、梅津が手際よく宮尾のバッグから必要な物を出し始めると、何も事情を知らない母親は眉をひそめたという。

「最初はかなり不信感を抱いたようです（笑）。トレーナーとはいえ、女性のカバンを勝手に開けるなんて、と。待合室で梅津さんが母と2人になったときに『実はお付き合いさせてもらっています』と明かし、そこで初めて『そうだったのね』と誤解が解けたみたいです」

軽い気持ちで付き合っていたわけではない

　ただ、交際は母親に認められても、ボクサーとしてはどん底。ケガで長期離脱を強いられるなか、心の支えとなった梅津と二人三脚で再スタートを切ることを決断した。ジム内では2人の距離感により気を使うようになり、今まで以上に練習に打ち込んだ。

「梅津さんも私も、『恋愛関係にあるからひいきしてるんじゃないか』という見方をされるのは嫌だったので、細心の注意を払っていました。それに私の目標はずっと世界4団体統一することでしたから」

©Takuya Sugiyama

　宮尾は「関係がバレないためにあえて厳しくされたかも」と振り返るが、トレーナーの思いはそうではなかった。覚悟を持って担当となった梅津はきっぱり言う。

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