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落合博満以来のホームラン王へ…ロッテ・ポランコ「ノーパワーだった」原点からの才能開花と“愛されキャラ”を支えるレジェンド左腕の金言
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/09/05 11:02
「パワー」全開のホームランを量産するロッテ・ポランコ
「家に帰りたい。ドミニカに戻りたい」
辛い時、いつも思い出すのは故郷の景色。そして、その地にいる両親の事だった。「家に帰りたい。もうドミニカに戻りたい」。ほとんど毎日のようにそんな電話をかけ、寂しさのあまり枕を涙で濡らす毎日だった。それでもなんとか踏ん張れたのは母からの激励があったからだ。
「いつも電話で帰りたいと言うと、母が『もうちょっと頑張りなさい。きっといいことがあるから』と励ましてくれた。その言葉を信じて、練習をすることが出来た」
息子を甘やかすことなく背中を押し続けてくれたことでその後の人生が開けた。「もし、帰ってきていいよという甘い言葉をかけられていたら、きっと本当に戻って今はないよ」と振り返る。
ルーキーリーグ、マイナー時代にメジャーチームのマニュアル化されたトレーニングをこなし、指示された通りに栄養学に基づいた食事をしていると細かった身体はみるみるうちに大きくなり、パワーがついた。ホームランを打った際にベンチ横のカメラの前で「パワー!」と叫び、本塁打を量産する現在の礎はこの期間に築かれたのだ。そして2014年、ついにポランコはメジャーデビューを果たし、翌年は開幕をメジャーで迎える。22年に来日し読売ジャイアンツに入団するまで823試合に出場し96本塁打。地道な努力の末、華やかな栄光を手に入れることになる。
生涯忘れ得ぬリリアーノの言葉
アメリカ時代、家族のように慕っていたのが同じドミニカ出身でチームの先輩投手であるフランシスコ・リリアーノだった。弟のようにポランコを可愛がってくれ、毎日のように食事に連れて行ってくれた。
「彼はスーパーピッチャーだ。ノーヒットノーランも達成している。練習方法から生き方、すべてを彼から教わった」とポランコ。スーパースターでありながらも驕り高ぶることなくいつも謙虚な姿勢を貫いていた。それを不思議に思い尋ねると「どんな成績を残していても、記録を達成しても関係ない。人はいつもどんな時も謙虚な気持ちを持っていないといけないんだ。人生において謙虚であることが大事。それは野球選手としてではなくて人として、だ」と教えられた。
プライドが高く、周囲を見下しているようなプレーヤーも少なくないメジャーリーグという極限の世界で、その言葉は若いポランコの胸に刺さった。今でも忘れない言葉であり自身もそうありたいと大事にしている。そんな生き方を教えてくれた大先輩とは今でも交流は続く。来日後も毎日のように連絡をとり、近況を報告しているという。