甲子園の風BACK NUMBER
「高嶋先生が『智弁和歌山のせいです』って…」強豪校敗退続出だった今夏の地方大会“番狂わせの震源地”のその後…心機一転のリスタートを追う
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/09/01 17:18
2年前の夏の甲子園全国制覇から今年は県大会1回戦負けとジェットコースターな監督人生の智弁和歌山・中谷仁監督
今夏のチームも現チームで1番を務める藤田一波や同2番の渡辺颯人ら有望な1年生が多くベンチ入りしていた。中谷の中で、ふと当時のことが脳裏によみがえったという。
「高嶋先生はあの時、どんな風にチーム作りをしていたのかなとか、僕らの時もそうだったなーとか。そんなことは考えましたね」
高野山に敗れた後、すぐにグラウンドに戻り、その日の午後から新チームが始動した。
下級生の多いチームをどう進化させていくのか。骨組みはどこから作っていくべきか。夏の初戦で敗れた悔しさ以上に、指揮官は今後のビジョンのことで頭がいっぱいだった。
グラウンドに選手を集めてミーティングを行った後、中谷は最初にノックを打った。
「守備、バッテリーをまず強化しなくてはならないと思いました。そこに向けてまずは汗を流そうと。これからしんどいことが多くなっていきますからね」
「一発勝負」…夏の県大会初戦の難しさ
夏の県大会の初戦の入り方は、どれほどの強豪校でも難しいとされている。大会直前の練習試合などで最高の“仕上げ”ができていたとしても、負けたら終わりの夏の県大会は、春にも秋にもない独特の雰囲気だ。特に下級生はそういった空気感の中で、“3年生の夏を自分が終わらせてはいけない”と一層力が入る。
入念に準備をしたとしても、ちょっとしたボタンの掛け違いが思いもよらぬ展開を生むこともある。
今夏の自分たちはどうだったのか――。
だが、中谷はもう夏を振り返らない。
「今は心機一転して新チームでやっているので、僕が今(夏の戦いについて)何かを(話す)というところではないかなと。今はチーム全体として努力してやっていくしかないです。ただ、3年生にとっては最後の夏で、僕が至らぬせいで結果が伴わなかったのは僕自身が反省するところではあります。僕自身の学びとしては色んなことを感じる部分はありました」