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グラビア、TV出演で話題…筋肉もスゴい大学生ファイター・松谷綺(20歳)が語る“格闘技と学生生活”「試合の翌日が試験でした」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/08/30 11:00

グラビア、TV出演で話題…筋肉もスゴい大学生ファイター・松谷綺(20歳)が語る“格闘技と学生生活”「試合の翌日が試験でした」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

K-1女子アトム級王座を目指す松谷綺は現在大学2年生

松谷の生活「自分で使うお金はバイト代ですね」

 普段も大学に行ってからジムで練習。授業とプロ練習の時間が合わない時には、大学から通いやすい場所にあるジムに出稽古に行く。

「今2年生なんですけど、必修の授業が1限と5限みたいな日もあって。そういう時は合間に出稽古ですね」

 大学生はモラトリアム期間で山ほど時間がある、というのはどうも昔の話らしい。「出席重視」の授業も多く、時間のやりくりも松谷のテーマになっている。なのに、アルバイトもしているそうだ。

「大学生のうちにやれることはいろいろやっておきたくて。デビューしてからのファイトマネー、スポンサー料は全部貯金してるんです。将来のためにとっておこうと思って。自分で使うお金はバイト代ですね」

 そう聞くとかなり忙しそうだ。しかし所属ジムALONZA代表にしてK-1で2階級を制覇した卜部功也によると、松谷は「ジムの中でも一番練習してますよ」。

パヤーフォン戦はプラン通りの展開

 ボクシングジムに通い、フィジカルトレーニングも本格的に始めた。パヤーフォン戦は延長判定勝ち。奥足へのローキックを効果的にヒットさせ、勝負どころではパンチのラッシュでロープぎわに釘付けにした。パヤーフォンは日本で学んだ組み付きの少ない“K-1仕様”の闘いを見せていたが、終盤にはクリンチが増えていた。それだけ苦しい展開だったのだ。

「練習してきたことが出せました」と松谷。ほぼプラン通りに闘えたという。延長戦になる可能性も見据えていた。相手は前王者だ、そう簡単には勝たせてもらえない。

「パヤーフォン選手の軸はミドルキック。これまで対戦した選手は、ミドルをもらって下がってしまっていた。それでペースを握られちゃうんです。だからミドルをもらわないだけじゃなく、もらってもすぐ打ち返すことを徹底しました」

 奥足へのローは、相手が前足を立てて距離を保とうとするところを狙ったもの。全体重がかかった“一本足”に打ち込むからダメージも大きい。試合前から狙っていた攻撃だという。こうした戦術眼も松谷の強み。卜部代表は「綺の場合は自分で試合のプランを立てられるので。どう闘うかは本人に任せてます」と言う。

指導者の証言「綺は格闘IQが高いんですよ」

「本人の感覚と違うことをセコンドが押し付けてもよくないので。試合中に伝えるのはどの攻撃がうまく決まっているか、効いているかの判断。それと前に出て勝負をかけるタイミングですね。“今いけ!”と。でも綺はそれも自分で分かってますね。今回が特にそうでした。言わなくても自分からラッシュかけてましたから(笑)。

 綺は格闘IQが高いんですよ。技術や戦術に関する理解度が高い。プロで上に行くには必須の要素です。格闘技に関する“座学”の部分がベースにないと、指導する側との意思疎通もうまくいかないので。綺は“座学”のベースがあるから、今どんな状況で何をすれば効果的なのか、自分で判断できるんです。その上で“最後は気合い”じゃないですけど勇気を持って前に出なくちゃいけない。これは教えてできることじゃないです。でも綺はできる」

 4歳で空手を始め、小学校低学年から月に何度も試合をしてきた。“闘う”ということに関しての経験値が豊富で、それが格闘IQにつながっているのかもしれない。

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