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「エンゼルスはオオタニを信頼しすぎた」大谷翔平“1億ドルを失った悲劇”の背景…LA名物記者は“残留”予想「二刀流に難色を示す球団が増える」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/08/25 17:06
降板となる直前の投球シーン。右肘の負傷は大谷翔平の未来に大きく影響しそうだ
2勝3敗で迎えたアトランタ・ブレーブスとの優勝決定シリーズ第6戦で、シャーザーは右腕に疲労感を感じたために先発を回避した。そのシーズン限りでFAになるから、シャーザーは自身のコンディションを保つことを優先したというわけだ。その試合にドジャースは敗れて終戦したが、そうやって自身の価値を守ろうとするのはアメリカでは当然のこと。その例と同じように、今季限りでFAの大谷も、少しでも異常を感じたら自ら申し出るだろうというのがエンゼルス首脳陣の考えだった。
ただ、大谷はカネで動く選手ではない。それは日本人の気質でもあるが、その中でも特に大谷はカネよりもプレーすること自体を愛する選手だ。ベースランニングひとつを見ても、大差で負けていても高校野球のように全力で走ってしまう。指がつっても、チームの勝利のためには自分が必要だという理由でDH出場し続けてしまう。
「ユニークな選手だからこそ、抑えなければ…」
162試合の長いシーズンではペース配分が必要なのに、常に全力でプレーする。それが大谷の素晴らしさでもあり、魅力でもある。そんな彼に判断を任せたら、毎日プレーしたいと言うし、多少の違和感を感じていても限界まで投げ続けるに決まっている。
大谷はそんなユニークな選手だからこそ、チームが抑えなければならなかった。ただ、エンゼルスはそういった環境ではなかった。エンゼルスもまた目先の勝利のために大谷に常に出場して欲しかった。今季終了後の残留工作のためにも、本人の意向に真っ向から反対したくはなかった。そういったことがすべて重なったことで、今回のような致命的な結果が生み出されたのだろうと私は考えている。