Jをめぐる冒険BACK NUMBER
サイドバック王国の系譜を継ぐバングーナガンデ佳史扶21歳が思い描く未来像「リース・ジェームズのような怪物になりたい」〈パリ世代インタビュー〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/08/25 11:04
インタビューに応じてくれたバングーナガンデ佳史扶
「お父さんに『こんな選手もいるよ』って教えてもらったのがベイルでした。ガンガン攻撃参加するし、シュートも決めて。サイドバックでもこんなに攻撃していいんだ、楽しそうだなって思えるようになりました」
宏介さんと諒也くんはライバルなのに…
サイドバックでプレーする覚悟を決めた10代後半の佳史扶にとって幸運だったのは、FC東京がまさに“サイドバック王国”だったことだろう。
ユース所属ながらトップチームの練習に呼ばれると、そこではふたりの左サイドバックがハイレベルなポジション争いを繰り広げていた。
とりわけ彼らが左足で放つ鋭いクロスに、高校生の佳史扶は目を奪われた。
「宏介さん、諒也くんのクロスはめちゃめちゃ見て学びましたし、一緒にクロスの練習をさせてもらったこともあります。僕がトップチームに上がったときには、宏介さんは移籍していたんですけど、諒也くんのプレーを真似てみたりして、自分のスタイルを作ろうとしてきました。
宏介さんと諒也くんはライバルなのに、仲が良くてなんでも話し合っていて、すごくいい関係に見えました。同じように諒也くんは僕のことをいつも気にかけてくれて、『良いものを持っているから、もっと積極的に、自由にやれば良いから』ってアドバイスしてくれたりして」
先輩である太田や小川から盗み、長澤徹コーチ(当時)や佐藤由紀彦コーチとの居残り練習によって徹底的に磨いた左足のキックは、今では「武器」と言えるまでになった。
サイドバックでもゲームをコントロールできる
トップレベルの左サイドバックへの道を着実に歩む佳史扶がこのポジションの奥深さを知ることになるのは、22年シーズンのことだ。
この年に着任したのは、FCバルセロナでアカデミーダイレクターを務めた経歴を持つアルベル・プッチ・オルトネダ監督。このカタルーニャ人指揮官のもとでポジショナルプレーのエッセンスに触れ、ボール保持と立ち位置の重要性を理解した。
「それまでの僕の特徴はアグレッシブにガンガン攻撃に行くところだったんですけど、アルベルのもとで違う種類の楽しさを感じるようになりました。中に入るプレーにもチャレンジするようになりましたし、難しいんですけど、サイドバックでもゲームをコントロールできるんだなって。1年をかけて徐々にできるようになってきて、新鮮な面白さを感じています」
かつては好きな選手としてベイルやレアル・マドリー時代のマルセロの名前を挙げていたが、今は異なる選手に熱視線を送っている。