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2019年世界陸上を優勝後、代表を連続辞退…競歩・鈴木雄介35歳が語る“空白の3年間”「オーバートレーニング症候群の診断」「…引きこもり状態でした」 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/08/25 11:07

2019年世界陸上を優勝後、代表を連続辞退…競歩・鈴木雄介35歳が語る“空白の3年間”「オーバートレーニング症候群の診断」「…引きこもり状態でした」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

2019年の世界陸上での金メダル獲得後、3年ほど大会に出場してこなかったが、何が起きていたのか。本人に話を聞いた

「延期されたオリンピックがまた近づいてきて、自分としては正直、この状況から逃げだしたいって思いました。もう競技どころではなくて、本当に普通の生活すらままならなくなっていたので……。陸上だけでなく、何もかも投げ出したい。そこまで追い詰められてましたね。もちろん、今村文男コーチ(富士通陸上競技部競歩ブロック長)には色々と相談をしていましたけど、そんな本音を言えたのは妻だけでした。きっと自分以上に辛かったと思いますよ。言葉に詰まって、妻は泣いてましたから」

1%でも可能性があるなら、出たかった

 沈痛な面持ちで、話を続ける。

「いま思うと、東京オリンピックとその翌年に開催されるオレゴンの世界陸上(鈴木は前回の優勝者で出場権を既に得ていた)、それが足かせになっていたように思います。やっぱり周囲は期待してくれますし、それに向けてサポートもして下さる。自分としても応えたいのにそれができない。『なんでだろう。どうしたら良いんだろう』って、さらに自分を追い込んでしまった。練習を継続できない時点で答えはもう既に出ていたんですけどね。1%でも可能性があるなら、自分としても出たかった。結局、(石川県)輪島市で行われた日本選手権(2021年4月)の後にコーチには話をしたんですけど、諦める決心をしたのはその少し前でした。『辞退するよ』と妻に話をした夜は、自分も涙が出て仕方なかったです」

 2021年6月22日、所属先の富士通陸上競技部から、鈴木の東京五輪辞退が伝えられた。自国開催のオリンピックという、アスリートにとって最大の誉(ほまれ)と言える舞台から、鈴木は静かに身を引いた。遅くはなったが、まだ代わりに補欠選手の繰り上げ出場ができるタイミングだった。それこそが、判断のデッドラインだったのだ。

引退も考えた中で見えた希望の光

 東京オリンピックを辞退した鈴木だったが、その後も回復は遅れ、オレゴン世界陸上への出場も見送らざるを得なかった。何度も「引退」の二文字が頭をよぎったと言うが、辞めなかったのは心底この競技が好きだからだろう。暗闇の中、ようやく希望の光が見えてきたのは、昨年の12月頃だったという。

【次ページ】 まるで不死鳥のようですね

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