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「ユウキならタクマもカムイも超えられる」元F1ドライバーも期待する角田裕毅の後半戦とステップアップの可能性
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2023/08/23 11:03
アルファタウリのフランツ・トスト代表に抱きしめられる角田。トスト代表は今季限りの退任を表明している
そんな角田を見て「タクマ・サトウを思い出したよ」と語るのは、かつて佐藤琢磨とB.A.R.ホンダ時代を同じチームで過ごし、スーパーアグリ時代にはチームメートになったこともある元F1ドライバーのアンソニー・デビッドソンだ。
「タクマもB.A.R.ホンダ時代は、チームからの評判を気にしてなかなか自分の走りができないことがあった。F1はほかのスポーツに比べて、非常に政治的でいろんな声が聞こえてくるから、ドライビングに集中するのが難しいんだ。今年のユウキは決して戦闘力が高くないマシンにもかかわらず、全戦完走してポイントも数回獲得しているように、この3年間で最高のパフォーマンスを見せている。このまま行けば、タクマを超える日本人ドライバーになるだろう」
そのデビッドソンにとって、これまでで最高の日本人F1ドライバーがル・マン24時間でトヨタの一員として一緒に戦ったことがある小林可夢偉だ。
「僕たち元F1ドライバーの何人かがカムイのことを『日本のライコネン』と言うほど、彼は周囲の声に動じない強いハートを持っている。ユウキにもそうなってほしい。ユウキには最強の日本人F1ドライバーになるポテンシャルがあるのだから」
琢磨、可夢偉以来の才能
角田にそのポテンシャルを感じているのは、F1アナリストとして活躍しているイギリス人ジャーナリストのサム・コリンズも同様だ。
「ユウキなら、ダニエルを簡単にやっつけると思っていたから、ハンガリーGPでの敗戦は正直驚いたよ。彼にはF1で勝てる才能がある。そんなドライバーはタクマとカムイ以来だ。タクマとカムイはホンダやトヨタの撤退によって、その道を断たれた。ユウキの場合、ホンダが2026年以降もF1活動を継続することになったので、タクマとカムイが果たせなかった勝てるマシンを手にする可能性がある。そのためには、今シーズンの後半戦でリカルドに勝ち続けなければならない。そうすれば、来年は無理かもしれないが、25年には新しい道が開けるかもしれない」