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甲子園の風BACK NUMBER
「万波は終わった」と批判も…横浜高恩師が語る、万波中正が“伸び悩む怪物”だった頃「毎朝、電子レンジの前に立って…」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/23 06:00
今年、打っては19本塁打、守っては強肩からレーザービームを放つなど躍動するプロ5年目の万波。高校時代には知られざる苦闘があった
しかし、本業のバッティングに関しては「時間がかかる」という予想が的中し大不振に陥ってしまう。春の公式戦ではホームランなし。関東大会になってもチャンスでことごとく凡退し、チームはベスト8入りを逃した。「自分のせいです。自分を信じて打席に立つことができなかった」。そう口にし、体を小さくする万波の姿があった。
彼の一番の才能は、努力をし続ける力
夏の県大会ではホームランも放つ一方で、決勝戦では5打席連続三振と好不調の波が目立った。2年連続で出場した甲子園では1回戦敗退。さらに、新チームとして最上級生で迎えた秋季大会では、準々決勝で鎌倉学園に8ー15で8回コールド負けという屈辱。チャンスの場面で三振に倒れうつむくその様は、16歳のデビュー戦でスタジアムを沸かせたあの豪快な空振り三振とは全く違う姿だった。
「万波は終わった」、「才能を潰してしまった」……。
伝統ある強豪校だけに、平田のもとにも外野から大批判が届いた。中には「”ハーフ”の選手はわがままだ、練習熱心じゃない」という、謂れのない偏見や誹謗中傷の言葉すら受けたという。
「本当に酷い先入観ですよ。中正は物凄く練習熱心で、彼の一番の才能は、努力をし続ける力だといってもいい。聡明でリーダーシップもあって、自分の振る舞いや発言がどういう影響を与えるかということについても、しっかりと考えて行動できる選手でした」
才能の塊だった「スーパールーキー」がぶち当たった大きな壁。もがきながらも最後の夏に挑む万波には、さらなる試練が待ち受けていた。
<続く>