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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
即プロよりむしろ…4年後の未来に胸躍る? 現地記者が明かす甲子園“大学野球で活躍しそうな”隠れた逸材5人《野手編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/21 11:01
スカウト注目の超本格派…以外にも好選手が多いのが甲子園の面白いところ。筆者が見た大学4年間で化けそうな「晩成型」選手は…?
【4】東海大甲府高・兼松実杜外野手「4年後にドラ1で…」
東海大甲府高・兼松実杜(3年・176cm76kg・右投右打)のスイングは「本物」と見た。
全身の強靭なバネの連動でフルスイングできて、しかも、バットヘッドが背中を叩くほど振り抜ける柔軟性。強さと柔らかさを兼備した貴重な存在だ。あの打ちにくい専大松戸高・青野流果投手のサイドハンドからの動くボールを、ジャストミートして足直撃の痛烈なピッチャー返しにしたスイングには「怖ろしさ」すら感じたものだ。守備ワーク、走塁を見ても、いちいち野球の「形」がいい。
山梨県予選の準決勝、決勝で、合わせて3本塁打をかっ飛ばす離れワザをやってのけた選手。しかも、貴重な右打ちのハードパンチャーだ。本人、プロ志望届を出せば、ドラフト指名もあるかもしれないが、大学監督としては「外野手だったら大学でさらに成長して、4年後にドラフト1位で!」と、そちらのほうを熱く勧めたい。
この6月、全国大学野球選手権の神宮球場で、ある大学監督のこんな話がとても興味深かった。
「大学の監督は、ほんとに疲れる。相当、辛いですよ。コーチはいても、100人以上の学生を相手に、野球以外にも進級・就職に、年頃の男子たちですから、時にはプライベートな事まで持ち込んで。そんなこと家庭の問題だろうと思っても、しょうがないから間に入ったり。何かあったら、責任はみんな監督ですから。だから楽しみは、学生たちが育っていくことと、勝つことだけ。勝つことは、力量のある選手を獲ればいいんですが、もう一つ、育てる喜びを与えてくれるヤツ。『アイツがいるから、今日もグラウンド行くか』って、こっちの背中を押してくれるようなヤツ。そういう選手が欲しいですね」
つまり、教える側に「夢」を与えてくれるヤツ。それなら、この夏の甲子園に「イチ推し」を見つけた。
【5】沖縄尚学高・仲田侑仁一塁手「ほれぼれする空振り」
沖縄尚学高・仲田侑仁一塁手(3年・186cm94kg・右投右打)は、ほれぼれするような空振りをしてくれるバットマンだ。
「ラグビー全日本」みたいな雄大な体躯……だけど、ことさら威圧するような大げさな構えではなく、自然に構えて自然に振り出して、スイングバランスが実にいい。豪快さばかりを追いかける「一発屋」ではない。
きっと、すごく真面目な高校生なのだろう。「打たなくちゃ」と自分を追い込んで、捨てていいボールまで追いかけて損をしているだけ。三振を怖れず、詰まることを恐れず、打ちたいボールだけを待ち構えて気持ち良くジャストミートすれば、それだけで一体どこまで白球が飛んでいくのか。教える者の夢が、果てしなく広がっていく間違いなしの「傑物」である。
<投手・捕手編から続く>
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