IWGPのベルトは、“業界のアイコン”にふさわしい存在であることの証明としての価値を高めつつある。そう感じさせた王座戦だった。

中野たむの叫び「スターダムが世界で一番」

　そしてメインでは、アメリカ遠征から帰国した林下に「ついてきた」という身長180cmの“謎の巨人”メーガンが、前哨戦なしで中野の赤いベルトに挑戦した。

　メーガンは、いざ目の当たりにしても謎の存在だった。

　外見からはエジプト神話的な雰囲気も感じさせるが、被り物やコスチュームはペガサスを模したもののようで、愛称は“メガサス”。国籍も生年月日も不明だ。

　中野はキックで様子を見ようとするが、メーガンは全く効いている素振りを見せない。近づけば掴まれて投げられ、思い切って飛び込んでもやはり投げられ……とペースを掴むことができないまま、中野は場外に投げ捨てられてしまった。

　しかし「深い悲しみを背負ったやつほど強い」と自認する“情念の女王”は、諦めることを知らない。キャッチされても再度の場外プランチャで流れを手繰り寄せ、効いていないように見えたローキックでも徐々にダメージを蓄積させていった。そしてついに、バイオレットシューティングの連発でダウンさせることに成功。メーガンのパワーボムやF5を食らっても肩を上げ、最後はタイガースープレックスで投げ切って勝利を収めた。

　この試合もまた、強さの象徴である赤いベルトの王座戦らしいものになったわけだが、それだけでは終わらなかった。

　試合後、中野は「世界ってめっちゃ広い」とメーガンの強さを讃えると、「でも、私はスターダムを世界で一番だと思ってる！」と叫んだ。

　STRONGとIWGPという、スターダムの“外”に直結したベルトを巡る戦いの後に行われた赤いベルト戦。広い世界からやってきた未知の強敵との戦いを制し、ベルトを大事そうに抱えながら叫ぶ中野は、赤いベルトの、スターダムの価値そのものを誇示しているかのようだった。

　その2日後の8月15日、後楽園ホールで行われた『5★STAR GP』のリーグ戦で、赤いベルトの王者・中野とIWGP女子王者・岩谷の戦いが実現した。結果は15分時間切れ引き分け。試合後、満身創痍の中、岩谷のベルトに自らのベルトを被せて覆おうとする中野の姿に、大阪での叫びが重なった。

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