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「気分はまだ“お兄さん”のまま」佐藤弘道55歳が明かす父の死、恋愛禁止、『おかあさんといっしょ』の舞台裏「もともとはあがり症なんです」
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph byShiro Miyake
posted2023/08/25 11:01
元・体操のお兄さんとして現在も体操指導などの活動を続ける佐藤弘道さん。「おかあさんといっしょ」初出演から、今年で30周年
弘道さん まったくなかったです。もともとあがり症なので、すごく緊張してしまって。それに、審査会場には、審査員のおじさんたちがずらっと並んでいるんですが、目の前に子どもたちがいるつもりでパフォーマンスしなきゃいけない。
僕の先代のお兄さんの天野勝弘さんが劇団出身の俳優さんだったこともあってか、応募者のほとんどが俳優の卵だったので、みなさん、子どもが本当に目の前にいるようにパフォーマンスするんです。僕は演技指導すら受けたこともないし、これは絶対に落ちたなって思いながら帰りましたね。
だから、2次オーディションへの案内の電話がかかってきたときは驚きでした。2次では、カメラテストもあり、カメラの前で手遊び歌や体操をやりましたが、この時もまったく手ごたえはありませんでした。だからなぜ選ばれたのかもよくわからないんですよ。後で、「並んだときに一番姿勢が良かった」と聞いたので、それが決め手だったのかもしれません。
収録初日に父親が亡くなった
――合格の知らせを聞いたときは?
弘道さん 実家のやきとり屋で仕込みをやっていたときに電話がかかってきて。まさか受かると思っていなかったから、お店のことを真剣に考えていなかったんですよ。母に相談したら「そんな機会めったにないんだから、やりなさい。店のことは大丈夫だから」って背中を押してくれて。その言葉で腹が決まりました。
――初めての収録はどんな感じでしたか?
弘道さん 実は、収録初日に父が亡くなったんです。がんでずっと闘病していたんですが、前夜に「今夜が峠」と言われていたので、家族みんなで病院に泊まり込んで。朝方、ようやく峠を越えたかと思ったら、スーッと息を引き取った。その顔を見届けてから、NHKに行きました。
――そんな時でも、子どもたちの前では笑わないといけないですよね。
弘道さん 悲しいという実感すらわかず、初収録だし、とにかく行かなきゃという思いが強くて。
当時は1日3本分収録するんですが、1本目と2本目のことはあまり覚えていなくて、3本目でようやく「あ、今収録やってるんだよな」って我に返った感じでした。
「ウワサに聞く『恋愛禁止』は本当ですか?」
――毎週のスケジュールはどんな感じでしたか?
弘道さん 当時は、日曜日と月曜日にそれぞれ3本分収録がありました。火曜日は歌のお兄さん、お姉さんの歌の収録日。水曜は全体リハーサル。木曜、金曜、土曜は何もなければ休みですが、全国でコンサートやイベントがあるので、週末は各地に行っていることも多かったですね。ただ、休みがあっても他の仕事はできない。僕らは芸能人でもタレントでもなく、「おかあさんといっしょ」という番組の契約社員なので。
――ウワサに聞く「恋愛禁止」は本当ですか?