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『熱闘甲子園』が“宿舎の取材”を大事にする理由とは? 毎晩生放送『報ステ』も兼務するヒロド歩美アナ(31歳)の忙しすぎる夏
posted2023/08/15 11:04
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Yuki Suenaga
2020年、世界を恐怖のどん底につき落としたウイルスは、“球児たちの夢”までも奪っていった。
センバツはもちろん、夏の甲子園も新型コロナウイルス感染拡大の影響で戦後初の中止が発表。目標に向かって挑戦する権利すらもなくなった球児たちの涙は、観ている側の胸を締めつけた。制限のある中で高校野球の取材を続けていたヒロド歩美アナウンサーも、そんな姿を目の当たりにした一人だ。
「美談にしてはいけないけれど、甲子園でも地方大会でも、夏が終わった時の涙は美しいと思うんです。すべてを出し切っているから。でも、報われない涙って本当につらいんです。だからと言って、こっちが高校生たちに対して『つらいよね』『悲しいよね』と決めつけることでもない。感情をひとつに定めることが難しい2020年でした」
球児の思いを受け取った「手紙」
交流を断たれたことが一番つらかったと振り返るが、ヒロドはそこである行動に出た。
「手書きの文字の方がリアルに感情が伝わるかもしれないと、お手紙の交流を始めました。返事をくれた球児の中には消しゴムで何度も消して書き直しているのが分かる跡があって、……しっかりと思いを共有できたことはよかったなと思いました。高校生だけでなく、監督さんたちも“ウチにはこういう選手がいて”と、チームのことをたくさん教えてくださいました。『オンエアするかどうかではなく、こういう選手がいることをヒロドさんの心の中にしまってほしい』と書いてくださった監督さんもいて。本当に直筆の温かさ、パワーを実感しました」