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「小4で腹筋が割れていました」世界を目指した元ヨット少女が、なぜ高校野球の顔に? ヒロド歩美アナ(31歳)の運命を変えた阪神マートン取材
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byYuki Suenaga
posted2023/08/15 11:03
ABCテレビ入社当初は野球の知識は全くなかったというヒロド歩美アナ。今や、インスタのアイコンにも野球ボールが写るほど
高校を卒業したヒロドは、早稲田大学の国際教養学部に進学。実は大学1年の頃、4年生には甲子園を沸かせたスター、斎藤佑樹投手がいた。しかし、当時はまだ野球に関心を持てずにいたため、早慶戦の観戦は一度もなかった。
「今になって何をやっていたんだろう、って後悔しています。すごくいい時代だったのにもったいないですよね」
ちなみに今年の『熱闘甲子園』は、斎藤氏も加わった3人体制で放送されている。「(早慶戦に行っていないことは)ご本人には絶対に言えません」と苦笑いしたが、「斎藤さんにもたくさん取材したい」と意気込みも語っていた。甲子園も佳境に入るが、息の合った“先輩・後輩”の共演も見どころの1つにしてほしい。
転機となった阪神マートンの取材
もともと、アナウンサーを目指したのは祖母に声を褒められたことがきっかけだった。
「ずっと覚えていたわけではないけれど、将来のことを考えた時に祖母の言葉を思い出したんです。確かによく考えたら学校の教室や廊下でもよく声が通っていたなと。だから先生の悪口は言えなかったんですけどね(笑)」
確かにヒロドの声は、重みがあるとでも言うべきか、太く、通りやすい。「喉のケアは本当に何もしていない」というが、その聞き取りやすい声はスポーツ現場とも相性がいいように感じる。
導かれるように、早稲田大学を卒業後の2014年に晴れてABCテレビに入社。阪神のお膝元のテレビ局とあって、試合の生中継はもちろんタイガース特番も多くラインアップされている。「12球団のチーム名すらも言えなかった」というヒロドが、なぜ野球の番組作りに携わるようになったのか。
「当時アナウンス部にいた(清水)次郎さん(現・西宮甲山高校野球部監督)に『(小学生時代にオーストラリアへ留学経験があったこともあり、)英語が話せるならマートン選手に話を聞いてきて』と言われたんです。新人なのにいきなり球場で野放しにされて……。どうやって話し掛ければいいのか分からなかったんですが、野球以外の話題を聞いたことが功を奏して、(マット・)マートン選手がいろいろなことを話してくださったんです。あの出来事が自分の中ではとても大きかったですね」
それから阪神の中継が始まると、マートンの打席だけを観るようになった。選手への興味が先行するかたちだったが、そこから野球の魅力に気づき始めていく。
「研修中だった頃、先輩に『(野球の)スコアをつけてみる?』と。書いていくうちにパズルのような感覚になってすごく楽しかったんです。研修が終わってからも続けていたら『ヒロドはスコアブックを上手く書けるらしい』と噂が独り歩きして……内心ではまったく上手ではないことはわかっていたのですが、そのおかげでベンチリポーターの仕事が決まりました。だから、黙っとくもんだなぁって(笑)」