- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
「フルトンよりもデカく見えた」井上尚弥のスーパーバンタム級デビュー戦を、同級の先輩王者・岩佐亮佑はどう見た?「規格が違う。一つ上のフェザー級でも…」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/08/12 17:04
7月25日のフルトン戦。井上のスーパーバンタム級“デビュー戦”となったこの試合をかつて同級の世界王者だった岩佐はどう見たか
「有明のセミファイナルでWBO世界フェザー級王者のロベイシ・ラミレス(キューバ)と清水聡さんの世界タイトルマッチを見た直後に、井上選手のあのパフォーマンスを目の当たりにして、これはもう一つ上のフェザー級でも余裕で行けるなと思いました。ラミレスはうまくて強かったですけど、井上選手は規格が違う」
果たして、どこまで階級を上げていけるのか――。岩佐は考えを巡らせると、「次はスーパーフェザー級か」という言葉を自ら発すると、あきれながらふっと笑みをもらした。
井上は想像をことごとく超えてくる
「こういう想像はもうしたくないです。毎回、ことごとくそれ以上に超えてくるんだから。なんか、負けたみたいで(笑)。俺の想像できることはないですよ。今回、スーパーバンタム級は『自分の階級』でもあったので、さすがに『階級の壁』をそろそろ感じるんじゃないのかなと思っていたのですが、あの結果です」
フルトン戦を境に、考えが及ばないほど突き抜けていく男への見方が変わった。かつての同業者ではあるが、日本ボクシング界のアイコンとして、遠い目で眺めている。岩佐は願望を込めて、世界6階級制覇を果たしたマニー・パッキャオ(フィリピン)のように伝説になってもらいたいという。
一番見たいのは、井上vs.デービス
「全世界のスーパースターになり、100億円くらい稼いでほしい。ライト級で(五輪2連覇した元世界3階級制覇王者の)ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に挑むとか。一番見たいのは(現WBA世界ライト級レギュラー王者である)異端のジャーボンテイ・デービス(アメリカ)との試合かな。166cmの身長でライト級でもバンバン倒していますから(井上は165cm)。現実的に考えれば、あり得ないことだとは思っています。でも、井上選手の場合、これまでも想像を超えてきているから。この先、何が起きてもおかしくないですよね」
果てしない夢を追う30歳の井上は、どのような青写真を描いているのか――。岩佐はそれ以上想像することはなく、夏の光が差し込むカフェの席を立つと、セレスジムの後輩たちを応援するためにすぐ近くの後楽園ホールに向かった。すでに起業家として第2の人生をスタートさせており、いずれは将来に不安を抱えるボクサーたちの活動を支援し、セカンドキャリアまでサポートしていきたいという。33歳でグローブを吊るした男もまた新たな夢を追っている。
<「タパレス」編もあわせてお読みください>
岩佐亮佑(いわさ・りょうすけ)
1989年12月26日、千葉県生まれ。中学2年からボクシングを始める。習志野高校3年時に高校3冠を達成。2008年8月セレスジムからプロデビュー。2017年9月、IBFスーパーバンタム級王者・小國以載に挑戦し王座を奪取する。2019年12月にタパレスに勝利し、IBFの暫定王者に。2021年4月に王座統一を目指し、WBA王者アフマダリエフと対戦も統一失敗。今年6月に引退を発表。ニックネームは「イーグルアイ」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。