「戦力値を示す五角形のレーダーチャート図で言えば、パンチ、スピード、フィジカル、フットワーク、ディフェンスすべてで上回っていた。脱帽しましたよ。井上選手の五角形は、フルトンよりもひと回り大きかった。前半からあのフルトンの巧さを凌駕してしまったから」

俺はたとえ非国民と言われても、タパレスを応援します

　あらためて、井上の次なる標的となるタパレスに勝機がほとんどないことを確認させられた。ただ、一度拳を交えた対抗王者をばっさり切り捨てることはできない。人種も国籍も異なり、計量時に交わした会話もわずか。フェイスオフでは「How are you?」と微笑まれ、人柄の良さは感じたが、それだけではない。岩佐は不屈の精神ではい上がり、地道なトレーニングを積み重ね、31歳となったフィリピーノの姿を頭に思い浮かべていた。

タパレスに対しては、拳を交えた仲間という意識もある　©Getty Images

「俺に負けたあとも、あきらめずに一生懸命に頑張ったんだなと。『お前はすごいよ』って。同じリングで戦ったタパレスは、“身内”みたいな感覚なんです。ボクサーとして敬意を払いたい。井上選手のことは好きですが、俺はたとえ非国民と言われても、タパレスを応援します。純粋に頑張ってほしいです」

　有明アリーナでは遠慮して話し掛けることはなかったものの、4団体統一王座を懸けた井上戦で再び来日することがあれば、直接、激励に行くつもりだ。

井上と戦うのが「面白そう」と指名したのは…

　スーパーバンタム級のボクサーたちを見渡しても、もはやスーパーバンタム級に井上のターゲットとなり得るライバルを探すのは難しいという。世界ランキング上位に名を連ねる名前を見ても、首をひねるばかりである。

「ルイス・ネリ（メキシコ）では相手にならないし、ムロジョンの手堅くポイントを稼ぐボクシングではフルトン戦を見て分かるように勝つ可能性はかなり低い。強いて見てみたいカードで言えば、ジョンリル・カシメロ（フィリピン）かな。井上選手に勝つのは厳しいと思いますが、面白そう。この3人の中では最も意外性があります。ピンポイントで倒す『当て勘』があり、毎試合、弾ける瞬間があるんですよ。強打のイメージは強いですが、距離と間合いの取り方が良くて、ディフェンスもうまい。井上戦でもあのきらめきを見せられるのかどうか。興味があります。カシメロがぶっ倒されるところを見たいと思っている日本のファンも多いのでは？」

日本のファン的には“お騒がせ男”のカシメロ　©Getty Images

フェザー級でも余裕で行ける

　バンタム級時代にコロナ禍の影響で3団体統一戦が一度流れ、その後も井上に対して挑発を繰り返すなど因縁のあるカシメロ。規定違反で王座を剥奪された過去もあるが、ストーリー性はある。しかし、客観的に判断すれば、今の井上はスーパーバンタム級の枠で収まるレベルではないという。

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