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大学野球PRESSBACK NUMBER
“野球経験ゼロのガリ勉京大生”がダルビッシュ有とDMを…万年最下位の京大野球部に変革をもたらした「素人アナリスト」とは何者なのか
posted2023/08/11 17:02
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
JIJI PRESS
野球経験はゼロ、チームメイトの第一印象は「いかにも『ガリ勉の京大生』って感じ」――のちに阪神タイガースにアナリストとして入団することになる“野球ヲタ”三原大知は、その知識と分析眼で“圧倒的弱小”の京都大学野球部に変革をもたらしていく。元ソフトバンクの指導者・近田怜王と個性的な京大生たちの奮闘を描いた菊地高弘氏の著書『野球ヲタ、投手コーチになる。 元プロ監督と元生物部学生コーチの京大野球部革命』(KADOKAWA)より、一部を抜粋して紹介します。(全2回の2回目/「元プロ野球選手の鉄道マン」編へ)
◆◆◆
謎のガリ勉アナリスト
2019年4月。京大野球部2回生の池田唯央は、颯爽とグラウンドに出た。
池田は滋賀の公立進学校・膳所高校出身の大型投手だ。高校2年まで捕手だったが、身長190センチの巨体と強肩を生かして投手に転向。当初は「名古屋大に進学しようかな」と考えていたが、京大の青木から熱心な誘いを受けて一浪の末に工学部に入学した。
なお、学年の年次を意味する「〇回生」という呼称は、近畿圏の大学ではポピュラーになっている。そのルーツは京大が由来という説がある。京大より早く設立された東京大が学年ごとに進級試験を受ける仕組みだったのに対して、京大は一定の単位を取れば卒業できる仕組みだった。そのため学年で区切るのではなく、「〇回生」と呼ぶようになったという。
池田が投球練習を始めようとすると、見覚えのない学生が立っていた。
「なにもんや?」
明らかに異質なムードをまとっていた。やや丸みを帯びた体型。メガネをかけ、黒髪でいかにもおとなしそうな顔つき。手にはノートパソコンを携えている。
「いかにも『ガリ勉の京大生』って感じやな。キャンパスではよく見かけるけど、グラウンドではあまり見ないタイプやな」
聞けば、「アナリスト」志望の新入生だという。池田は「ああ、今年から募集をしたやつか」と納得した。