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「これが自分のリーダーシップ」 ラグビー日本代表の気になるキャプテン人事…姫野和樹をHCが絶賛した理由「姫野はその素質を持っている」
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/15 17:02
新主将候補としても注目を集める姫野和樹
姫野が口にしたキーワード
実際、前週はゼロだったトライ数は3に増え、得点も後半に限れば14-12と上回った。オールブラックスXVのブラッド・ウェバー主将は、「勢いづいた日本チームを止めるのは大変だった。我々は個人の能力で突破を図ったけれど、日本はオーガナイズされたディフェンスで向かってきて、突破するのは難しかった」と日本の変貌ぶりを称えた。
姫野が口にした「パッション」は、ノートライで敗れた前週の試合直後のミックスゾーンで自らが発したキーワードでもあった。
「もっとパッションを出していくのが大事だと思う」
やや煮え切らない戦いでW杯イヤーの初戦に敗れたチームに、姫野がまず注ごうとしたのはスキルよりプレーの強度よりも、情熱という形のない熱いものだったのだ。それは普段からの姫野という選手の魅力でもある。そして姫野が主将を任された第2戦、ジャパンは前週とは違う戦いぶりを見せたのだった。
「これが自分のリーダーシップ」
まだ勝ててはいない。喜べる内容ではない――そんな声もあるだろう。だが覚えておきたいのは、今年はW杯イヤーだということだ。手の内を見せずオプションを制限する、最大のピークをW杯本番に合わせる……コーチも選手もいろいろな思惑を抱えながら試合を戦っていく。手を抜くわけでは断じてないが、思い通りの結果が得られなくても、一喜一憂してはいられない。そんな難しい状況下で、結果に向き合いながらも「大事なのはパッション」と言い切る姫野の姿勢は頼もしく映る。オールブラックスXVとの第2戦で主将を務めたあと、姫野は言った。
「僕が思っているリーダーシップは情熱と愛情。これが自分のリーダーシップだと思うし、それはチームに伝染する。チームに火が付けば、それは大きな炎になる。僕は火付け役として、情熱をグラウンドの中で表現し続けることができたと思う」
7月22日のサモア戦は、姫野と坂手がともに先発で共同主将として臨み、敗れた。リーチが危険なタックルで前半30分という早い時間に退場処分を受けたのも響いた。それでも姫野は「W杯本番の前にこの事態を経験しておいて良かった」と言った。
W杯で誰が主将を務めるかは決まっていない。それでもジェイミージャパンが「姫野主将」という選択肢を得たことは間違いなさそうだ。
姫野和樹Kazuki Himeno
1994年7月27日、愛知県生まれ。'13年、春日丘高から帝京大へ進学。4年時に大学選手権8連覇。'17年、トヨタ加入。同年11月に日本代表デビュー。'19年W杯出場。187cm、108kg。