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「彼らの野球が終わるわけではない」 敗戦で見えた大阪桐蔭“本当の強さ”の正体 今夏のチームに必要だった「ピース」とは? 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/03 18:18

「彼らの野球が終わるわけではない」 敗戦で見えた大阪桐蔭“本当の強さ”の正体 今夏のチームに必要だった「ピース」とは?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

エースで主将の“大黒柱”前田悠伍(左)とキャッチャーの南川幸輝

 ただ、今春の近畿大会では前田はベンチに戻らなかった。それどころか、6月の対外試合でもなかなか登板せず、心配する声が聞かれる中、6月中旬の関東遠征の横浜との試合で久しぶりに実戦登板を果たした。その直後、大阪大会の組み合わせ抽選会に姿を見せた前田は、夏は“主将でエース”として復帰することを自ら明かした。

「去年の夏の甲子園では最後に悔しい負け方をしたので、まずは大阪をしっかり勝ち切りたいです。そのために準備はしているつもりです」

 晴れやかな表情で前田は当時、こう口にした。

 だが――現実はそうはいかなかった。

気になった大阪桐蔭の“異変”

 初戦の早稲田摂陵戦から計5試合、筆者は大阪桐蔭の試合を見てきたが、ひとつだけどうしても気になることがあった。

 ピンチが起きた時のチームの雰囲気だった。

 これまでの大阪桐蔭の強さは、単に能力だけでなく、一体感が目に付いた。主将を中心に、目標に向かっていかにチーム全員で同じ方向を向けるか、窮地に立たされた時にどういった姿勢で臨むのか。主将の“統制力”もひとつのポイントだ。もちろんそれは大阪桐蔭に限らずどのチームにも言えることだが、例年強力な「個」を備える大阪桐蔭では、一体感がひときわ大きな意味を持つ。

 近年で言うと、秋の大会にコールド負けを喫するも、持ち前のキャプテンシーで夏の全国制覇までチームを率いた14年の主将・中村誠(現・大阪桐蔭コーチ)や17年センバツで優勝し、2人目の監督のような存在感を見せた福井章吾(現・トヨタ自動車)らが思い浮かぶ。昨年のチームも、星子天真(現・青学大)がしっかり周囲を見渡し、持ち前の明るさでチームをまとめた。そして、星子の声に自然とナインは同じ方向を向いた。

【次ページ】 ふと思い出した8年前のチームの「記憶」

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