酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
スランプ脱出・村上宗隆23歳が7月7本塁打、三振減!“WBCで見た大谷翔平らの衝撃”を経て…ヤクルトは「セ台風の目」になるか
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/01 11:05
神宮の夜空にアーチを描く村上宗隆。本来の豪打が戻ってきた
しかしWBCで目の当たりにした大谷翔平のすさまじい打撃、そして「打球速度」の違いに、村上宗隆は大きな衝撃を受けた。大谷翔平すなわち「世界」と自分との差が絶望的に大きいように感じて、一時的に目標を見失ったのだろう。
WBCでも村上は中軸に座って不振にあえいだが、開幕後も大スランプに苦しみ、それがチームに決定的な影響を与えた。
しかしそれはあまりにも酷な話だ。まだ村上は23歳だし、大卒のレッドソックス吉田正尚がオリックスで初めて規定打席に達したのは25歳のシーズンだった。
チームでも最も若手のグループに入る村上が、いきなりチームの命運を握ることになったのは、精神的にも非常に重たいことだったのは想像に難くない。
調子のバロメーター「三振数」が減ってきた
それでも高津臣吾監督の村上に対する信頼は揺らいでいない。代打で1試合起用した以外は、今季も村上を4番で起用し続けている。巨大な大砲を積んだ大戦艦が方向転換するには時間がかかることを十分に承知して、信頼を揺るがすことなく中軸で打席を与え続けたのだ。
7月になって村上はようやく調子が上向きになった。村上の調子のバロメーターは「三振の数」だ。
3・4月 25試 39三振
5月 24試 28三振
6月 21試 29三振
7月 21試 18三振
開幕から6月まで、村上は試合数を上回る三振を喫していた。開幕当初は「大型扇風機」になりシーズンの三振記録を更新するのではないかと言われた。しかし7月の三振数はようやく試合数より少なくなった。
確かに「三振は本塁打のコスト」という部分はあるが、あまりにも「コスト高」になると本塁打数も伸びず、戦力としては厳しくなる。7月の三振数は試合数以下、この数字は村上が復調していることを意味している。
長い「方向転換」を経て…ヤクルトが台風の目に?
7月30日神宮球場でのDeNA戦、打席での村上宗隆はどっしりとしていた。ボールを見送る際の姿勢にも余裕が感じられ、4番打者の風格が戻ってきた。
第1打席の左前打も良い当たりだったが、それ以上に第2打席は、DeNAの中堅・桑原将志が背走してやっとのことで捕球した大飛球。勢いを感じさせた。
そして8回の最終打席、観衆の多くは「村上は打つぞ」と思ったのではないか。果たして、3-1から伊勢大夢が投じた速球を村上はフルスイング。打球がやや上がりすぎた感もあったが、右中間のスタンドに飛び込んだ。村上に自信に満ちた表情が戻ってきた。23歳の不動の4番打者は長い「方向転換」の時間を経て、再び艦隊の中心に戻ってきたのだ。
この試合では塩見泰隆も3番に座り3安打。ヒーローインタビューを受けた。