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スランプ脱出・村上宗隆23歳が7月7本塁打、三振減!“WBCで見た大谷翔平らの衝撃”を経て…ヤクルトは「セ台風の目」になるか
posted2023/08/01 11:05
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
本塁打を連発する長距離打者は、しばしば長いスランプに陥ることがある。筆者は“巨砲を搭載した大戦艦は、小回りが利かず、ゆっくりとしか方向転換できない”との言葉を思い浮かべる。
2021年に本塁打王になったオリックスの杉本裕太郎は翌年早々、大スランプに陥った。3、4月は83打数11安打1本6打点、打率.133。この時は観戦していて、打席に立ってもボールがバットに当たる感じがしなかった。解説の星野伸之氏が「杉本は“着払い”ばっかりですね」と言ったのが印象的だった。着払い=ボールがミットに収まってからバットを振っていたのだ。
スランプが長い傾向がある村上だったが
昨年の三冠王、ヤクルトの村上宗隆もスランプに陥ると長く苦しむ傾向にある。
昨年9月13日の巨人戦で王貞治、タフィ・ローズ、アレックス・カブレラのシーズン55本塁打に並ぶ一発を打ってから、村上は13試合60打席にわたって本塁打が出なかった。この間47打数6安打、打率.128、打点は何と1だった。
10月3日、シーズン最終戦のDeNA戦の最終打席で念願の56号が出たが、スケールが大きい分、スランプも長く深いのだと痛感させられた。
筆者はこの試合を神宮で見ていた。第2打席で左翼に軽打してきれいな安打が出たが、その時に一塁に駆け込んだ村上の表情が和らいで見えた。それが最終打席の本塁打につながったのではないかと思えた。
今季も、村上は深刻なスランプに陥った。今季の各月の打撃成績は以下の通り。
3、4月 25試83打13安2本12点 率.157
5月 24試89打24安7本15点 率.270
6月 21試72打19安3本10点 率.264
7月 21試77打24安7本17点 率.312
シーズン開幕直後に、極めて深刻な打撃不振に陥ったのだ。5月以降、徐々に立ち直りはしたが、それでも三冠王・村上宗隆としては、全く不本意な成績が続いた。
不振がヤクルトのチーム成績に影響を与えた
不動の中軸打者の不振は、チーム成績にもろに影響を与えた。
〈昨年と今年の7月末時点でのヤクルトのチーム成績〉
2022年
94試57勝36敗1分 率.613 1位
415得点358失点113本塁打、打率.254
2023年
91試38勝51敗2分 率.427 5位
329得点355失点79本塁打、打率.237
〈同じ7月末時点での村上宗隆の成績〉
2022年
94試326打103安37本95打点 率.316
2023年
91試321打80安19本54打点 率.249