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「いやいや、ちょっと待てよ」「頭が真っ白に」巨人・内海哲也が味わった“人的補償で西武移籍”の衝撃…気落ちする左腕を救った“ある言葉”とは
text by
内海哲也Tetsuya Utsumi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/12 17:03
2018年12月21日、笑顔で西武の入団会見に臨む内海哲也。7月12日発売の著書『プライド』では“人的補償の衝撃”を赤裸々につづっている
そう聞いて「俺は大丈夫かな」と思う反面、「いやいや、ちょっと待てよ」という心配もありました。ジャイアンツが人的補償の対象外としてプロテクトしそうな28人を予想してみると、自分は絶対に入っていないだろうと思ったからです。当時はいろいろ考えすぎて、不安に包まれていました。
そして12月20日、僕が人的補償でライオンズに移籍することが発表されました。最初に内々で話を聞いたときは「え?」と驚きしかなくて、頭が真っ白になりました。
「本当にすまない」救われた先輩の言動
それでも受け入れることができたのは、フロントの方から事前に話をしてもらっていたからです。
「どうしても直接話したい。練習しているところに行かせてくれないか」
電話をしてきてくれたのは、先輩の上野裕平さんです。今は広報を務めていますが、当時はGMを補佐するような役職でした。
年末のシーズンオフというタイミングで、僕は日本体育大学のグラウンドで練習させてもらっていました。上野さんはそこに来てくれたのです。
「本当にすまない。西武に行って、頑張ってきてくれ」
上野さんの言葉は、本当に救われるものでした。通常なら電話で「明日、スーツを着て球団本部に来てくれ」と言われて、その場で移籍を告げられて終わりだと思います。でも、上野さんは自主トレの場所までわざわざ来てくれて、一報を直接伝えてくれました。僕にとってすごく愛を感じる言葉で、その時点で切り替えることができました。
人的補償はFAについて回る制度だし、この移籍を後ろ向きではなく、前向きに捉えてやるのが内海哲也でしょ、と――。
<#1、#2から続く>