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防御率0.00! 中日の“20億円級守護神ライマル”は「落合監督ラストイヤーの浅尾拓也」を超えるか…過酷なブルペン待機でもエグすぎ
posted2023/07/10 17:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
野球史には、ゲーム終盤、その投手がマウンドに上がるだけで相手方のベンチに「あきらめムード」が漂うようなクローザーがしばしば現れる。
過去で言えば1998年、横浜が優勝したシーズンの「大魔神」佐々木主浩(45S、率0.64)、2002年西武優勝時の豊田清(38S、率0.78)などがそれにあたる。
防御率0点台の自信満々のクローザーがマウンドに上がって、相手チームにできることは「失投してくれ」と祈るくらいしかない。
しかし、今年それらをはるかに上回る活躍をしているクローザーが登場していることをご存じだろうか? それもリーグ最下位のチームで。中日ドラゴンズのライデル・マルティネスだ。
28試合に投げて防御率0.00、19Sの凄まじさ
マルティネスの今季成績(7月9日終了時点)は以下の通り。
28試1勝1敗19S 5H 27回41奪三振 失点2 自責点0
防御率は何と0.00。
それでも1敗しているのは、5月3日の阪神戦、7-6の9回から登板し大山悠輔に二塁打を打たれ、次打者の佐藤輝明は二ゴロに打ち取ったものの二塁・福永裕基の失策で同点に追いつかれる。代打・原口文仁に左前打を浴び、梅野隆太郎を歩かせて、木浪聖也にサヨナラ安打を打たれた。2失点したが、失策が絡んだため自責点はつかなかった。
それ以外には、失点も自責点もなし。28試合中27試合でほぼ完ぺきな投球を続けている。このまま無失点を続ければ、驚異的な記録が生まれる。
NPBで10イニング以上投げて、防御率0.00を記録した投手は、史上9人しかいない。
〈防御率0.00を記録した投手〉
2012年 岩本輝(阪神)
3試2勝1敗0S 0H 18.2回11振 失1責0率0.00
1970年 新井良夫(阪急)
4試0勝0敗14回13振 失1責0率0.00
2012年 根本朋久(日本ハム)
7試0勝0敗0S 0H 12.1回6振 失0責0率0.00
1983年 川本智徳(日本ハム)
4試1勝0敗0S 11.2回8振 失1責0率0.00
1973年 小林繁(巨人)
6試0勝0敗11.1回6振 失0責0率0.00
1951年 深見吉夫(大阪)
4試1勝0敗 11回1振 失0責0率0.00
1995年 山崎健(広島)
2試1勝0敗0S 11回7振 失0責0率0.00
2021年 高橋純平(ソフトバンク)
10試1勝1敗0S 2H 11回9振 失1責0率0.00
1957年 上土井勝利(広島)
4試0勝0敗 10.1回6振 失0責0率0.00
2012年の阪神、岩本は2010年のドラフト4位で入団し、この年が一軍デビュー。シーズン終盤の9月9日の中日戦で6回を零封、27日のヤクルト戦も6回零封で2勝、10月5日のヤクルト戦は6.2回で1失点で負け投手になるも自責点0だった。他の投手は主として救援で、短期間好成績を残したに過ぎない。
ライデルの絶対的な安定感と、2011年の浅尾
ライデルの「防御率0.00」は、今挙げた投手のケースとは全く異なる。絶対的なクローザーとして投げ続けながら自責点0を続けているからだ。