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「お前をつぶしてまで甲子園に行きたくない」1大会で772球、済美・安樂智大に故・上甲正典監督が語っていた思い「僕が監督でも絶対、投げさせます」
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byKatsuro Okazawa/AFLO
posted2023/07/19 11:01
2013年センバツ、済美の2年生エースとして772球を投じるも準優勝に終わった安樂智大。決勝は1-17で浦和学院に敗れた
「ドラフトの前でしたし、果たせなかった悔しさがこみ上げてきて。(弔辞の)感謝の気持ちはすぐ出てきました。自分で考えて、そのまま書きました」
登板過多の犠牲者と見る向きも少なくなかった。健康の観点では理解もできる。ただ事実として棺の前には他者には踏み入れぬ師弟だけの感情があった。
今日は良い日だ
1997年8月9日。
兵庫県尼崎市の宿舎、尼宝館。甲子園にやってきた宇和島東の初戦のオーダー発表が終わった。メンバーはひとりずつ監督の部屋に呼ばれ、短い会話を交わし、メモ帳を破った紙を渡される。
22年後、同じ高校を同じ場所へ連れてくることになる中堅手、長瀧剛のそれにはこう記されていた。
「増々力がついて来た。今日は良い日だ」
愛する練習は不要だった。
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