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「怖いなと思いました」車いすテニス全仏王者・小田凱人17歳が語る加藤未唯“失格事件”「加藤選手は結果で取り返してくれた。さすがだと…」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2023/07/06 17:00
全仏オープンの女子ダブルスで”失格判定”を受けた加藤未唯は、その後の混合ダブルスで優勝し、異例のスピーチを行なった
「人として同じ競技で競う仲間たちを思える関係性を築いていけたらいい。だから(あえてスポーツマンシップを)アピールする必要もないのかと思います。心から思うことが大事で、自分の感情を素直に純粋な気持ちでスポーツの舞台で発揮していくことが大事だと思います」
「国枝選手と戦う時点で、相当高ぶるものがあった」
レジェンド・国枝選手に憧れ、車いすテニスの世界に飛び込んできた小田は、昨年10月のジャパンオープンで、その国枝選手と決勝戦で激突し、そして敗れた。
「国枝選手と戦うっていう時点で、僕はもう相当高ぶるものがあった」
小田はその一戦をこう振り返る。
「国枝選手にとってはあれが(現役)最後の試合になってしまいましたけど、(敗れた)僕にとってもやっぱり勝ち負けがすべてではなかった、結果がすべてではなかった。勝った負けたなら、誰でも負けるし、誰でもそういうときはある。そうではなくて負けたとしても、あれだけの満足感というのは、あの試合じゃないと実現できなかったと思いますし、そういう意味でやっぱり嬉しかったですね」
「尊敬」と「勇気」と「覚悟」。
激しい戦いの間、憧れの国枝選手と小田の2人の間に流れたスポーツマン(パーソン)シップは、全仏オープンの加藤の心にもきっと同じ様にあったはずである。だからこそいま私たちは、相手ペアを必要以上に詰めるのではなく、失格になってもそのスポーツマン(パーソン)シップを失わなかった加藤を讃えることなのだろう。スポーツ観戦に於いては、観る側の内面、振る舞い、スポーツマン(パーソン)シップもまた、問われるということである。